真面目に働いているのに、なぜ仕事は減らないのか。資料を完璧に仕上げ、チャットにはすぐ返信し、進捗をこまめに確認する。どれも丁寧で誠実に見えるが、それぞれに問題があるという。日本能率協会マネジメントセンター(編)『なぜか余裕がある人のやらない技術』から、仕事を増やさないための術を紹介する――。(第1回)
PCを操作する手
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「完璧な資料」を作らなくていい

資料を開いた瞬間に、「量が膨大で読み切れない」と圧倒された経験はないでしょうか。丁寧に整理されているはずなのに、やたらとページ数が多く、どこから理解すればいいのかがつかめない。そうなると受け手の集中は緩み始め、説明する前から要点を探す姿勢に切り替わってしまいます。資料は、完璧なデータを見せるものではなく、業務を伝達するためのものです。

資料づくりでは、「抜け漏れがないこと」が正しいとされがちです。背景、経緯、データ、補足――あらゆる情報を揃えれば、相手を納得させられるはずだという発想があります。しかし実際には、情報が増えるほど受け手は取捨選択を強いられます。どれが重要でどれが関連が薄いか、受け手が判断しなければならないのです。つまり、資料の完成度を高めようとあらゆる想定を網羅するほど、受け手側に理解の負担がかかります。

たとえば、過去のデータや競合比較、想定リスクまで丁寧に盛り込んだ、新施策の提案資料のケースを考えてみます。どれも必要な情報ですが、選択せずにすべて列挙していくと、結論にたどり着くまでに時間がかかります。受け手は「結局どうしたいのか」をつかめないまま読み進めることになり、途中で集中が切れてしまうことにもつながります。

また、資料を簡潔にまとめたつもりが、「説明不足ではないか」「完成度が低く見えるかもしれない」と不安になり、スライドを追加してしまうこともあります。こうして補足が増えると、資料全体の重心がぼやけていきます。結果として、伝えるべき軸が曖昧になり、どれだけ丁寧に説明しても、聞き手が整理しにくい状態になってしまいます。

「8割で出す」を意識して

資料の役割や求められる情報は、場面によって変わります。意思決定の場では結論と判断材料が重視され、共有の場では全体像が求められます。また、見る側の立場や目的によっても必要な情報は異なります。

そうなると「誰にとっても完璧な資料作成」自体が現実的に難しくなるため、どの場面にも最適化されない中途半端な構成になりやすいのです。

完璧さを求めるほど時間がかかり、推敲のタイミングを逃してしまいます。時間をかけて細部まで整えた資料でも、状況が変わればすぐに古くなります。最終的な相手に見せる前に、修正期間を確保するためにも、早めの提出が欠かせません。にもかかわらず、「まだ不十分ではないか」という感覚から調整を続けると、提出が遅れ、目的のための修正の機会を失ってしまいます。

見直すべきは完成度ではなく役割です。資料はすべてを説明するものではなく、判断や理解を進めるための道具です。結論と軸を据え、必要な情報だけを載せる。詳細はあとから補足できると割り切り、資料は「8割で出す」という意識に切り替える。そうした不要を削ることで本質が整うのです。

POINT
・「誰にとっても完璧な資料」はつくれない
・資料は軸を意識して8割で前に進める