「お金儲けではなく、店を長く続ける」

季節に合わせて串焼きのウナギやトウモロコシ、ローストチキンなども用意し、焼き鳥以外のニーズも取り込む。利便性を高めるため、営業時間を徳田さん時代の昼過ぎ~夕方から、昼前~19時まで伸ばし、現金のみだった支払いもペイペイを導入した。こうした努力の成果は確実に数字に表れている。

「先代の時より、1.5倍ほど売り上げは伸びています。いまは1日平均で300本以上は売れていますね。多い時は400本を超えます」

店頭で接客する蛯原さん
筆者撮影
店頭で接客する蛯原さん

売り上げが伸びたといっても、徳光時代と単純比較はできない。徳田さんはひとりで店を回していたが、いまは必ずふたり体制。その分、人件費がかかっているため、決して経営に余裕があるわけではない。

目下の課題は、天候に大きく左右される売り上げを安定させること。蛯原さんは「お金儲けではなく、このお店を長く続けるために必要なこと」と語る。いまは、いつも夜ご飯のおかずに焼き鳥を買いに来る主婦をターゲットにした総菜を開発中だ。

「鶏肉の切れ端やネギの青い部分のような端材を使ってなにかできないかなと検討中です。もつ煮込みなんて、鶏肉の端材を入れたら旨味が出てオンリーワンのものができそうかなと思って。あと、うちはレバーが一番人気なので、レバニラも売れると思うんですよね。焼き鳥で使っている肉で唐揚げにしても絶対においしいと思うし」

「やきとり日和」の商品の一部
筆者撮影
「やきとり日和」の商品の一部

薬剤師と焼き鳥店主の“意外なシナジー”

焼き鳥店が作るもつ煮込み、レバニラ、唐揚げ。どれも人気になりそうだと思うのは、筆者だけではないだろう。この自由な発想は、薬剤師を薬局に派遣するビジネスの相乗効果かもしれない。大手チェーンの薬局と対抗するために、あい薬局のような個人経営の薬局はさまざまな工夫を凝らしているという。

「知り合いの薬局のなかには100種類ぐらいの絆創膏を取り揃えて販売している薬局や、冷凍の馬刺しを売っている薬局もあります。生き残り戦略として誰も思いつかないようなことをやっていて、薬局経営者の方からもたくさんの刺激を受けますよね」

先述したように、蛯原さんは週4日、やきとり日和で働く。残りの3日のうち2日はあい薬局ともうひとつ別の薬局で働き、日曜は休日だ。このハードスケジュールの合間を縫って、先述した薬局と薬剤師のマッチング事業の営業もしている。

マッチング事業も焼き鳥店も、軌道に乗せるための試行錯誤が続く。どちらかの事業に集中したほうがいいのでは? という意見もあるかもしれない。しかし、珍しい二足の草鞋として新聞やテレビに取り上げられたことで、マッチング事業にも追い風が吹く。

「薬剤師の営業に行くとき、自分が取り上げられた新聞記事のコピーと焼き鳥を持って行くんですよ。普通は小洒落たチョコレートとかじゃないですか。それでいつもビックリされて、面白いねというところから話を聞いてもらったり、営業で知り合った社長さんや薬剤師さん、事務の方も焼き鳥を買いに来てくれたりするんです。記事を読んだ地方の薬剤師さんから連絡を貰うこともあって、いいシナジーが生まれています」