まず動き、人々の反応を得る

原田氏は独立起業を決意し、行動を始めた。まず、当時参加していた複数の勉強会や交流会で知り合ったビジネスパーソンたちに、この仕組みのアイデアを話してみた。すると「面白い」「そんな仕組みがあるといい」と、好意的な反応が少なからず返ってきた。「企業は研修の目的で、海外や子会社に人材を送ることがある」「とはいえ、まったく関係のない他社に社員を送るというのは、ありそうでない」といったコメントもあった。

「ならば、どのような組み合わせならこの仕組みは成り立つのかを考えてみよう」。行動しさまざまな反応を得るなかで、原田氏は何を考えればよいかを絞り込んでいく。大ざっぱな最初の着想をどう具体化していけばいいかという道筋が、絶えず行動し続けたことによって、少しずつ見えていった。

2000人以上と名刺交換し、参加を募った

当時、日本の多くの大企業では、リーマンショック後の新たな成長の機会を模索するなか、「イノベーション創出」や「オープン・イノベーション」のかけ声がかかるようになっていた。しかし多くの企業で、イノベーションをリードする実践知をもった中堅以下の社員は不足していた。

このような状況のもと、原田氏は2015年にローンディールを創業。2000人以上と名刺を交換し、「レンタル移籍」の原型となるプログラムへの参加を呼びかけた。そうするうちに「トライアルしてみてもいいよ」という企業に出会い、「レンタル移籍」の試行が始まった。

幸いなことに移籍先のベンチャー企業は、原田氏のネットワークのなかですぐ見つかった。ベンチャー企業にレンタル移籍した人材がどれだけ活躍するか、ワクワク感のある新たな学びをどれだけ体験するか、そして移籍元の企業にどれだけ貢献するかは、原田氏自身にとっても当時は未知数だった。だがすべては見えていなくても、行動することで未来の扉が開かれていくことがあることを、原田氏はそれまでの経験から知っていた。

最初の試行に参加してくれた企業では、結局「レンタル移籍」が定着することはなかった。だが、その後NTT西日本をはじめとする大企業による導入や継続的な活用が進むなかで、レンタル移籍が生む価値はより深く言語化され、問題が生じやすいポイントやそこへの介在方法などのノウハウも蓄積されていった。