いまだ揉め続ける北陸新幹線「延伸ルート問題」の行方
北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸をめぐり、巨額の建設費と工期の延伸、そして沿線自治体の利害対立により、複数案での再検討が行われている。中でも完全な新線の「小浜ルート」と、東海道新幹線に接続することで建設距離が短く財政負担を大幅に抑えることができる「米原ルート」の2案が、B/C(費用対効果)や実現性の面で接戦の状況だ。
今回、整備区間の敦賀―新大阪間のみで評価する「個別評価」と、東京―新大阪間全線で評価する「一体評価」で費用対効果の算出がなされた。特に、一体評価についてはSNSで「北陸―中京圏の流動の便益の増減を考慮に入れているのか」という疑問の声が上がっている。
筆者が国交省鉄道局に取材したところ、「北陸―中京圏流動の便益増減も考慮に入れて算出した」という。また、米原ルートでの東海道新幹線直通本数の想定については、具体的な回答は差し控えるとしつつ、「現在の東海道新幹線のダイヤを見て、このくらいなら乗り入れできるのではないか、という本数で想定した」とのことであった。
マスコミ報道ではわからない「重要な事実」
【小浜ルート/米原ルートの建設費・工期・B/C比較】
▼小浜ルート
・建設費:3兆9000億~5兆8000億円
・工期:25~26年
・B/C比較(費用対効果)
→社会的割引率(※)4%試算:一体「1.1」、個別「0.5」
→社会的割引率2%試算:一体「1.3」、個別「0.9」
▼米原ルート(東海道直通)
・建設費:2兆1000億~2兆7000億円
・工期18年(別途、環境影響評価に+7年)
・B/C比較(費用対効果)
→社会的割引率4%試算:一体「1.0」、個別「0.7」
→社会的割引率2%試算:一体「1.3」、個別「1.1」
※社会的割引率:金利による将来にわたる貨幣価値の減少率を示す。4%試算が一般的だが、昨今の長期にわたる低金利の実態を踏まえ、2%などの低率での試算が加わるようになった。
この試算の結果、社会的割引率や一体評価(全線で計算し直した新ルール)か個別評価(延伸区間のみで測る従来ルール)かによって、僅差で小浜が優勢だったり米原が優勢だったりと、接戦の状況である。
報道の多くは社会的割引率4%(国の従来の基準)の一体評価のみ取り上げて「小浜ルート優勢」と大々的に報じた。だが、より実態に近い社会的割引率2%試算(昨今の低金利の実態に合わせた基準)では、一体評価のB/Cで小浜も米原も同じ「1.3」、個別評価では小浜「0.9」に対し、米原(直通案)「1.1」となり、米原ルートのほうが優勢なのだ。

