「3兆円以上」増えるルートが選ばれる謎
少なくとも、小浜ルートを当然視できるほどの差はない。にもかかわらず、政府やJR西日本は米原ルートより1兆8000億~3兆1000億円も多く国民負担がかかる小浜ルートを進めようとしている。北陸新幹線沿線以外の国民も含め、そのまま納得しなければならないのだろうか。
仮に小浜ルートを採用して5兆8000億円で作るならば、国民一人あたり4万8000円強(※)、25年で割れば毎年約2000円の「強制サブスク加入」と同じだ。しかも、その費用と工期で済む保証はなく、毎年2000円の負担を強制されながら、開通する頃には便益を得ることなく亡くなっている方も多いかもしれない。36歳の筆者でも還暦を過ぎる頃になる。
※整備新幹線の建設費用負担は、総額のうちJRからの既設整備新幹線の線路使用料を充て、その残額を国と地方で2:1の割合で負担する。ただし、地方負担分は国による交付税措置もあるため、実質的な負担割合は国と地方で9:1の割合になることもある。そのため、建設路線沿線以外の国民の税金による負担割合はかなり大きく、他人事ではない側面がある。
ならば、せめて最大3兆円も費用を抑えられ、建設延長が短い分、工期遅延のリスクも抑えられる米原ルートではダメなのか。また、米原ルート採用で浮いた金額を四国や山陰などの新幹線整備に充てるほうが国民全体にとって公平ではないだろうか。
「小浜ルート」をゴリ押しするワケ
北陸―中京圏の移動を考えても、小浜ルートでは京都乗り換えとなり遠回りだ。乗換時間を含めて金沢―名古屋間約370kmで1時間50分程度、料金は現在の運賃・料金テーブルに当てはめて計算すると1万3500円かかると考えられる。これが米原ルートであれば、約250kmで1時間15分程度、料金も在来線特急時代に倣って北陸・東海道通算であれば8440円。小浜ルートと比べて5000円も安く済むだろう。
では、なぜ政府やJR西日本は小浜ルートを進めようとしているのか。ここで小浜ルート派の主張を見てみよう。利点として、新大阪まで完全な新線による整備によって東京―新大阪間の二重系化や、環境影響評価が進んでいるためすぐに着工できること、所要時間の短さ、JR西日本のみの運営による料金面での優位性などを挙げている。
これに対し、東海道新幹線に接続する米原ルートについては、東海道新幹線のダイヤ逼迫、直通不可の場合は乗換発生による時間増、JR西日本とJR東海の2社をまたがることによる料金増とJR西日本の取り分減少、信号システムや脱線防止の仕組みの違いなどを理由に反対している。

