起業家には「戦略型」と「直感型」がいる
起業家は、イノベーションの新たな機会をどのようにしてとらえるのか。経営学的には二つの説がある。
ひとつは、徹底した調査と分析を行い、それに基づく精緻なビジネスモデルを組み立てたうえで行動を開始し、機会を捉えようとする科学的アプローチ(コーゼーション型)。もう一つは、アイデアを思いついたらまず行動に取りかかり、その中で得た情報や知見を活用しながら機会をつかもうとする直感型アプローチ(エフェクチュエーション型)である。
MBAなどのビジネススクールの授業で学ぶことが多いのは、依然としてコーゼーション型の行動である。企業などの研修でも、筆者が見聞きするかぎり、用意されているプログラムの多くは、コーゼーション型の行動を学習するものである。
一方、エフェクチュエーションは、バージニア大学のサラス・サラスバシー教授が、成功した起業家たちの実例を分析した結果導き出された行動様式である。起業家の行動の要点にかかわる理論として、近年国内外で人気が高まっている。
戦略型だけでは今の課題に対応できない
MBAコースや企業研修がコーゼーション型の行動を重視していることには、もちろん理由がある。大企業は通常、過去に何らかの起業家的機会をとらえたことで成長を果たしたわけだが、その後は確立した収益事業を守っていれば、当面の経営は安泰である。中小企業であっても、創業から時間がたち、安定した経営を実現している場合などには、似たような状況にあることが少なくない。このような企業のなかでは、コーゼーション型の行動をとることに合理性が生まれる。
ところが、人口減少社会をはじめとする未知の状況に直面するなかで、昨今では多くの日本企業が、コーゼーションに頼るだけではジリ貧が避けがたいという問題に直面している。ここにエフェクチュエーションの出番がある。

