女性天皇について議論さえしなかった高市政権
敬宮愛子内親王、すなわち愛子さまには皇位継承の資格がない。日本国憲法で〈皇位は、世襲のものであって〉と定められているが、世襲のための具体的なルールは皇室典範にゆだねられている。その皇室典範は、第1条で〈皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する〉と定めている。
〈男系の男子〉とは父方の血筋を引く男子で、愛子さまも父方の血を引くが、女子なので該当しない。皇室典範のこの規定をあらためないかぎり、愛子さまが天皇になられる可能性はなく、今回の皇室典範改正の議論では、この点の改訂に関しては議論さえされなかった。
高市早苗内閣は男系男子による皇位継承にこだわっており、議論を拒んで方針を堅持した恰好だ。しかし、各メディアの世論調査では、愛子さまが天皇になられることを支持する人の率は、60%から時に90%にまで達している。高まる愛子天皇待望論に目もくれない政府に対しては、「国民の総意を無視している」という批判も湧き上がっている。
筆者も愛子天皇が望ましいと思っている。「国民の総意」という議論に即していうなら、国民の支持率が高い人が即位したほうが、国民と皇室の関係が良好にたもたれ、象徴天皇制の安定に寄与すると思う。だが一方で、皇位継承は人気投票ではない。人気を優先して天皇を決めていたら、皇位継承のルールが歪みかねず、そうなれば将来に禍根を残す。
「愛子天皇」が望ましい合理的理由
それでも筆者が「愛子天皇が望ましい」と考えるのは、それがいちばん合理的だからである。もっといえば、愛子さまが即位できる環境をつくらないと、世襲による皇位継承そのものが危うくなりかねない。
その最大の理由は、男系男子による皇位継承がきわめて困難なことにある。現状でも男系男子の皇位継承者は、秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまの3人しかおられず、次世代で継承権をお持ちなのは悠仁さまだけ。今後、増えるかというと、きわめて心もとない。
長い歴史において、天皇は多くの側室に子を産ませ、そこから男子を選んで即位させてきた。しかし、大正天皇が拒んでからは天皇に側室はおらず、現行の皇室典範では、側室は完全に禁じられている。そうでなくても、いまのご時世に側室は社会が許さない。
しかも現在、予想を超える速度で少子化が進んでおり、むろん、皇室もその流れから逃れられない。少子化は女性の地位向上や権利の高まりと無縁ではないからだ。
昔なら女性は周囲から「子供を産め」と、当たり前のようにプレッシャーをかけられたが、いまそんなことをいえば、明確なハラスメントと認定される。現代の女性は自分の生き方に照らして、結婚も出産も自由に選択でき、周囲が強要することは許されない。皇室においても、皇位継承者の妻に出産を強要したりすれば、それはハラスメントになる。

