女系による継承が否定された証拠はない

現在、男系男子による皇位継承にこだわる人たちは、男系男子こそが日本の歴史や伝統の正統性を保証する命綱であるかのように説く。だが、実際には、男系男子とは明治の政治家の命綱だった。

もっとも、天皇家の歴史において男系は意識されてはいた。古代の律令の基本法典のひとつで近世まで効力があった「継嗣令」も、男系による継承を前提としている。ただし、女系による継承が否定されていたわけでもなかった。

だから歴史上には、古代の推古天皇にはじまって江戸時代の後桜町天皇まで10代8人の女帝が存在する。男系男子にこだわる人たちは、それは男系のつなぎにすぎなかったと主張するが、過去にそう意識されていたと証明する手立ては存在しない。

たしかに、宮内庁が厳重に管理している「皇統譜」では、現在に至るまで皇統が、例外なく男子で継承されてきたことになっている。これについては、前近代の日本においては、家系図とは一般に、その家の権威を高めたり家格を維持したりするために、意図して創作されることが多かった、という事実だけを記しておく。

分家が皇統を継いでいいのか

男系男子にこだわる人たちは、今後、ほんとうに男系による皇統を守ることができると思っているのだろうか。それが難しいからこそ、旧11宮家出身の独身の男系男子を養子として迎え入れる制度が、皇室典範の改正案に盛り込まれたのだろう。

だが、ずっと一般国民として自由を謳歌してきた人が、いまさら養子として皇室に入ろうとするだろうか。そういう人がいたとして、その子が即位すれば、約600年前の室町時代に分家した旧宮家の人が皇統を継ぐことになるが、その天皇を国民は自分たちの統合の象徴として尊重するだろうか。それが男系男子だからといって、皇統が継がれたことになるだろうか。

過去にも養子の例はある。たとえば、安永8年(1779)に後桃園天皇が急死した際、傍系の閑院宮家から養子が迎えられ、光格天皇として即位した。だが、血筋の隔たりは7親等にすぎず、600年前の血筋とは意味がまったく異なる。そして既述したように、こだわる人がそうまでしてこだわる男系男子には、さほどの歴史的根拠がないのである。

だったら、男女を問わず第一子に皇位継承権をあたえるのが、いちばん合理的で、皇統が途絶えるリスクがもっとも低い。だから「愛子天皇が望ましい」のである。

企画展「生誕100年森英恵ヴァイタル・タイプ」を鑑賞される愛子さま=2026年06月25日午後、東京都港区の国立新美術館(代表撮影)
写真提供=共同通信社
企画展「生誕100年森英恵ヴァイタル・タイプ」を鑑賞される愛子さま=2026年06月25日午後、東京都港区の国立新美術館(代表撮影)

男系男子にこだわる人たちは、126代にわたって男系で継承されてきたことが、世界からの尊敬の対象になっている、と主張する。しかし、その根拠が神話に依拠していると知った途端に、世界が日本を蔑むリスクも考えたほうがいい。

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