【第4位 ビル・ゲイツ】

ボーイスカウトの「ナッツ訪問販売」でいかに売るかを考えた
22年世界長者番付の第4位は、マイクロソフト創業者で、世界最大規模の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」共同議長のビル・ゲイツ。推定総資産は1290億ドル(約19兆円)。世界有数の資産家であると同時に、寄付総額も世界屈指のゲイツのマネー哲学もまた、父親であるビル・ゲイツ・シニア(20年没)の教育方針の影響を色濃く受けている。

飛行機移動の際にはエコノミークラスを利用し、高級ホテルや高級車にも興味を持たないなど、質素倹約好きのゲイツだが、22年7月には一度の寄付額としては史上最大級となる200億ドル(約3兆円)を自身の財団に寄付することを発表したように、慈善活動には巨額を投じてきた。

よく働き、よく稼ぎ、築いた資産をどう使うか。そこには、90歳を超えてもビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長を務めるなど現役であり続けた父親の生き方が反映されている。

著書『人生で大切にすること』(10年、日本経済新聞出版)で父親は、「骨身を惜しまずに働く」ことの意義を訴える。父もまた、質素で働き者だった自身の父親の姿を見て育ち、その勤労意欲と社会奉仕精神から大きな影響を受けたという。

弁護士として成功し、「ビル・ゲイツの父親」としての名声を得るずっと以前から社会的地位を確立していた父親だが、妻とともに、3人の子供たちに健全な金銭感覚を身につけさせていたことがうかがえるエピソードがある。

長女のクリスティは10歳の時にはすでに小遣い帳を持っていて、1セントの狂いもなく収入と支出を記録していたという。

小遣い帳をつけることは、夢や目標に向かってお金の面でもこつこつと計画的に工夫や努力をしたり、必要なものをよく考えて買う習慣をつけたりすることに役立つ。子供が取り組むマネー教育に最適なツールであり、すぐにでも取り入れたいところだ。

夕食の席でも本を読んで親に叱られるほど読書に没頭したゲイツだが、お金やビジネスに関することは実体験から学んだと父親は著書で回想している。

父親、ゲイツともにボーイスカウトOBだ。ゲイツは小学校時代、ボーイスカウトの活動資金を得るため、ナッツの訪問販売をしていた。そこで、「どんな要因が影響して買うという意思決定につながるのか、商品にとって適切な市場を見つけられるかどうかで最終的な成功が決まる」といったことを学ぶ。父親は平日夜と週末、さまざまな地域でナッツを訪問販売するゲイツの運転手役を務め、より多くの売り上げを目指して家から家へとまわって注文を取る息子を見守った。

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小学校を卒業して地元シアトルの名門「レイクサイドスクール」に進学し、のちにマイクロソフトの共同創業者となるポール・アレンと出会ってからのゲイツは、プログラム開発などで荒稼ぎするが、それはより性能の良いコンピュータを手に入れたいという目的があったから。

幼い頃から目標達成のための資金調達方法を身をもって学べる環境にあったからこそ、世界最高の起業家・慈善事業家が生まれたと言えるだろう。

※ゲイツ夫妻には3人の子供がいるが、子供たちには14歳になるまで携帯電話を持たせなかったという。14歳以降も、食事中の携帯電話は使用禁止、寝る前の使用時間も制限していた。