マスク氏による6兆円超の買収劇
マスク氏は総額440億ドル(約6兆4000億円)という驚くべき金額でTwitterを買収した。
Twitterは、日本でも月間利用者数が4500万人に及ぶ人気を誇る。しかし、Googleが2021年に2570億ドルもの売上を上げたのに比べると、Twitterの売上はわずか50億ドルに過ぎず、長年赤字体質が続いていたことも考えると驚くような金額だ。
また、デマの拡散や、犯罪、誹謗中傷に悪用されることも多く、問題の多いSNSであることも知られている。
世界一のお金持ちマスク氏が買収したという事実だけを見ると、「自分ならば金儲けできると考えたからに違いない」と勘繰るかもしれない。
「理想的な言論の場にしたい」
しかし、マスク氏はこれを明確に否定している。
マスク氏は、「ソーシャルメディアでは極右と極左がエコーチェンバーによって分裂し、多くの憎悪を生み、社会を分断する大きな危険に直面している」という危機感を持っているようだ。そのため、「暴力に訴えることなく、幅広い深淵について健全に議論できる共通したデジタルの広場を持つことが文明の未来にとって重要」と考え、買収したというのだ。
もともとマスク氏は、Twitterのヘビーユーザーとして知られている。自分の好きなTwitterを理想的な言論の場にしたいと考えて買収した、というのは納得できる。
早速、行動に移したのがアメリカのトランプ前大統領への対応だ。トランプ前大統領は、米連邦議会襲撃事件について、ツイートで極右の過激派を駆り立てワシントンに襲撃させたとされた。その結果、「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてTwitterアカウントは永久凍結されていたが、マスク氏は彼のアカウントを復活させた。
さらに、これまでに凍結されていた多くのアカウントを「恩赦」として復活させる方針を自身のアカウントで明らかにしている。
凍結されていたのはそれだけの理由があったためだ。どちらもユーザー投票を経ているが、トランプ前大統領アカウント復活に関しては、賛成は51.8%と反対をわずかに上回ったのみ。投票自体が偽アカウントやボットに狙われる可能性があり、事実、トランプ前大統領の投票時はボットの攻撃が激しかったとしている。これでは、とても民意とは言い難いのではないか。