「子供たちも現実社会の責任から逃れる必要はない」
マスクは当時からテクノロジー分野に強かったため、IT担当としてワープロを使いこなし、長女のトスカは事務作業やモデルスクールの裏方の仕事を担当したという。そのかいあって、マスクのみならず、次男はレストラン経営者として、トスカは映画監督として、それぞれの道で成功を収めている。
「子供たちも現実社会の責任から逃れる必要はない」というメイの教育方針は、まさに生きる力を身につけるためのマネー教育の根幹をなしていると言えるだろう。「髪を振り乱して衣食住のために働かざるをえなかった」メイだが、自身の働く姿を示したことが子供たちの勤勉さと独立心を育み、大きな財産になったと語っている。
04年から4月を「Financial Literacy Month(マネー教育月間)」と定めて、国を挙げて子供たちのお金にまつわる意識を高める取り組みを続けているアメリカでも、「稼ぐ・貯める・使う・増やす」のうち、稼ぐこと、つまり勤勉に働いて報酬を得ることを金融教育のスタート地点に位置づけている。まずは働くことの意義を親子で話し合ってみてはどうだろうか。
メイはまた、フォーブスに寄稿した「How to Raise a Billionaire(億万長者の育て方)」で、3人の子供それぞれの興味を自由に追求させたと明かしている。
コンピュータに強い関心を持ったマスクは、10歳でプログラミングを独学でマスターし、12歳の時には対戦ゲームソフトを自作した。メイは、自身が経営するモデルスクールに在籍しているコンピュータサイエンス専攻の大学生にそのソフトを見せて高評価を得たことから、パソコン雑誌に投稿するようマスクにアドバイス。その結果、ソフトが売れてマスクは見事に500ランド(500ドル相当)の対価を手にした。
メイは「これがテスラやスペースXにつながるとは思わなかった」と語っているが、12歳のこの成功体験が、週100時間以上働くハードワーカーとしても知られるマスクの原点になっているのは間違いないだろう。