覚悟は、犬たちにも伝わっている
これは、寄付してくれる人に向けた約束。齊藤氏は、犬たちにも約束していることがある。
「譲渡活動を始める前に保護した子には、生涯ずっと一緒にいようと約束したので、咬まなくなっても譲渡対象にはしません。たかが犬との約束と思う人もいるかもしれませんが、犬は、約束したことは絶対に守らないと信用してくれない。と僕は思っています。破ったら、飼い主として尊敬してくれない。だから、やると言ったことはやるし、やむを得なくできない時は、理由をきちっと説明して許してもらいます」
言葉じゃない。そうした覚悟が犬にもしっかり伝わると言うことだろう。
「もし、あなたに何かあったらどうするの、その犬たち、と聞かれることがあります。でも、僕のような活動をしていなくても、どんな人にも言えることですよね。明日事故で死ぬかもしれないというのは、リスクの確率論の話。頭数分の、たとえばどこかに預けた場合にかかる費用は既に確保してあります。万が一の場合には、知り合いの提携団体に預ける契約もしています」
犬たちへの責任を果たすための用意は周到だ。それでも…
「自分でできることには限界があります。なので、日本中に、うちみたいな施設ができるように。新しい施設は、やさしい未来の始まりの聖地になればいいなと思っています」
愛車はフェラーリから軽バンに変わり、手も指も赤黒い内出血の腫れや生傷が絶えないが、「今が生きてきて一番豊かで幸せ」と笑った。