人口の都市集中によりクマの生息範囲が拡大
昨年11月末、秋田市内のスーパーにクマが侵入し、店員1人がけがをする事故が起きた。クマは店内に居座り、2日がかりで捕獲され、駆除された。
近年、このように人の住む場所で人がクマに襲われる被害が増えている。2023年度に全国で被害に遭った人は過去最悪の219人にのぼる。24年度は8月末までに、前年度を上回るペースでクマの出没が確認されている。
その背景として、40〜50年という長い年月をかけて、クマの分布している範囲が広がり、人の住んでいる場所に徐々に近づいてきていることが挙げられる。その理由の一つは、長年にわたりクマを保護する政策が採られてきたことだ。バブル期にゴルフ場やスキー場をつくるために山林開発が盛んに行われ、クマの分布域が孤立、縮小し、西日本を中心に絶滅が危惧される地域も出てきた。そこで1999年に鳥獣保護法が改正され、各都道府県でクマの捕獲上限数を定め、獲りすぎないようにする政策が採られてきた。それがある程度成功した(※1)といえる。
※1 筆者註:環境省「平成30年度中大型哺乳類分布調査」によると、2003年度から18年度にかけてのクマ類の分布域の増減率について、中国地方270%、近畿地方169%、東北地方134%、北海道129%と増加する一方、四国地方は88%、九州地方は絶滅したとされる。
もう一つの理由は、日本の人口の都市部への集中と地方の過疎化である。戦後しばらくの間は、人が山へ入って活動していたため、動物を山へ押しとどめる効果があった。しかし50年ほど前から人口が都市部へ集中するようになると、人が撤退した里山は耕作放棄地となって徐々に森へと戻っていき、野生動物の新たな生息場所になっていった。70年代までは人間が陣取り合戦に勝っていたが、その後、人が都市へと移動し、撤退した場所に野生動物が分布を広げていったのである。
2023年はどんぐりが凶作だったため、クマの出没が非常に多い年だった。クマにとって、生息地である森から出るのはかなりのリスクを伴う行動であり、よほどのことがなければ出ることはない。それでも人の住んでいる場所に出てくるのは、クマを引きつけるエサになるような誘引物があるためだ。田舎では庭にカキの木やクリの木がある家が多く、かつては秋になるときちんと収穫されていたが、高齢化や過疎化した集落では果実が収穫されずに放置され、それに誘引されてクマが出没するのである。
なぜクマに遭遇すると、人身事故につながりやすいのか。基本的にクマは植物を中心にした雑食性で、人を襲って食べることはない。クマが攻撃してくるのは防御のためである。クマは基本的に人への警戒心が非常に強いため、人に遭わないようにしている。人と鉢合わせしてしまうと、クマもパニックになり、目の前の人をはね除けてでもその場から逃げようとする。その結果として被害に遭ってしまうことが多い。
人の住む場所に出没したクマに、私たちはどう対処すべきだろうか。「駆除せずに保護すべきだ」という声もあるが、前提として、人の住む場所に出没したクマに対して、私たちにできることは駆除以外にほぼ何もないと考えたほうがいい。行政の立場からすれば、人身事故は絶対に起こしてはならない。一刻も早くクマがいない状態にする必要がある。そのためには、銃器による駆除しか方法はないのである。
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