1月28日、原発不明ガンで亡くなった経済アナリストの森永卓郎さん(67)は生前、日本経済が長期低迷する理由について「日本の経済社会を支えてきた官僚が、小市民化したことが一つの大きな原因だ」と語っていた。森永さんの著書『官僚生態図鑑』(三五館シンシャ)より、官僚たちが進める「異次元の少子化対策」の問題点を紹介する――。
少子化の本当の原因は何か?
少子化の原因は、合計特殊出生率の低下だ。
合計特殊出生率(Total Specific Fertility Rate)は、しばしば「1人の女性が一生の間に産む子どもの数」という説明がなされるが、それは正確ではない。
正しくは「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」だ。
そもそも合計特殊出生率の「特殊」という言葉は、昔留学した厚生省の官僚が言い出したもので、その官僚は英語が得意ではなかったために、SpecificをSpecialと勘違いして、「特殊」と訳してしまったのだそうだ。Specificは「それぞれの」というのが本来の意味だ。ただ、一度広がってしまった誤訳を修正するのは容易ではなく、いまだに誤訳が使われ続けていることになる。
さて、人口学では合計特殊出生率が2.1を下回ると、人口の再生産が可能な出生数が得られないことが古くから知られている。つまり、必然的に人口減が進行していくわけだ。
2023年の合計特殊出生率は1.2と、2.1を大幅に下回っていて、少子化が進んで当然の状態になっている。
では、なぜ合計特殊出生率が低下しているのか。