少子化の原因は「生涯未婚」が増えたこと
いまから四半世紀前までは、それは「晩婚化」が原因だとされていた。
女性の社会進出に伴って、出産を先送りする女性が増えてきた。だから、一時的な出生率の低下が起きているが、出産を先送りしているだけなので、いずれ出生率は回復するだろうと多くの学者が考えていたのだ。
しかし、その考えが完全に間違っていることが、すぐに明らかになった。
合計特殊出生率は、次の3つの要因で決まることがわかっている。
②完結出生児数(これが本当の1人の女性が一生の間に産む子どもの数)
③生涯未婚率(統計的には50歳時の未婚率)
1985年から2020年までの35年間の変化を見ると、妻の平均初婚年齢は、25.5歳から29.4歳へと3.9歳晩婚化している。ただし、直近9年間は、晩婚化はまったく進んでいない。
一方、結婚した女性が生涯に産む子どもの数である完結出生児数は、1987年(85年は調査がない)の2.19から、2021年には1.90となっている。若干低下しているが、結婚すれば、いまでも女性はほぼ2人の子どもを産んでいるのだ。
それでは、なぜ少子化が進んでいるのか。
その答えは明らかだ。女性の生涯未婚率が1985年の4.3%から、2020年には16.4%へと劇的に上昇したのだ。
ちなみに男性はもっと極端で、1985年の3.9%から、2020年には25.7%に上がっている。つまり、いま起きている少子化の主因は「結婚しない」ことなのだ。
「しない」ではなく、「できない」
「結婚しない」という表現は正確ではない。正しくは「結婚できない」のだ。
国土交通省が「平成22年度結婚・家族形成に関する調査報告書」を再集計した結果によると、20~30代男性の場合、年収800~1000万円の既婚率は44.0%だが、年収の下落とともに既婚率は低下し、年収100万円台は5.8%、100万円未満は1.3%となった。
年収が下がると結婚している人の割合が絶望的に下がるのだ。
労働政策研究・研修機構が2014年に発表した報告書で、20代後半男性の既婚率を見ても、年収150~199万円が14.7%であるのに対して、年収500~599万円だと53.3%に跳ね上がる。
非正社員の平均年収は170万円だから、非正社員の男性はほとんど結婚してもらえないのだ。
労働力調査によると、1984年の非正社員比率は15.3%だったが、2023年には37.1%と劇的に上昇している。
平均年収が170万円ほどしかない非正社員が爆発的に増えたから、結婚ができなくなったというのが少子化の本当の原因なのだ。