なぜ専業主婦への補助はないのか
一方、専業主婦世帯で、女性が自分の手で子育てをしている場合には一切補助がない。
「子育ては社会全体で支援する」という理念に基づけば、子育て全体を支援するべきで、「共稼ぎ」か「片稼ぎ」かというライフスタイルによって差別をすべきではない。
だから、保育所とか学童とかベビーシッターに補助金を出すのであれば、本来なら専業主婦で子育てをしている人にもその分補助を出すべきだ。
しかし、そうした動きはまったくなく、共稼ぎ世帯の優遇だけがどんどん進んでいく。専業主婦として子育てに専念する可能性がほとんどなくなってきた官僚が、自らの利益を想定して、あるいは自らの狭い視野だけで政策作りをしているからなのだ。
ほかにも官僚のお手盛りといえる政策がある。
少子化対策の一環としての、夫の育休推進だ。現在でも、産後8週間以内に夫が4週間分の育休が取得できるが、制度を利用して育休を取得した場合、その期間の給与の80%(手取りにすると100%相当)が支給されるようにする予定だ。
現行制度では、夫が育休を取得した場合の手当は、給与の67%(手取りの80%相当)が支給されるだけなので、大幅な給付増となる。この制度の恩恵も官僚はフルに受けることができる。
3兆6000億円の少子化対策予算では、なぜか共稼ぎ世帯優遇の子育て支援だけが拡充されていく。
少子化対策で増えるのは官僚の利権
その一方で、野党が一貫して要求してきた学校給食費の無償化や大学の無償化に関して、官僚は無視を決め込んでいる。
学校給食費の無償化に必要な財源は5000億円、国立大学の無償化は3000億円で可能だ。
それをなぜ官僚が進めようとしないのか。
それは、少子化対策予算が官僚とは無関係の低所得層に流れてしまうからではないか。
あまりにうがった見方だというのなら、もう1つの可能性は天下りだ。
学校給食や国立大学を無償化しても、官僚になんの利権も生まれない。
ところが、子育て関連サービスを拡充したり、育休関連給付を創設したりすると、そこには新たな運営予算や天下りポストが発生する。
異次元の少子化対策で生まれるのは、子どもではなく、官僚の利権なのだろう。