朝礼で「指導員が腕立て伏せ」をしたワケ

トヨタ工業学園は行事、イベントが多い。コビーグループの小林の言に従えば、学園もまた良い学校と言える。

学園の行事を考えるのは指導員だ。そして、行事を実施に移す時は生徒たちがリードする。学園の行事で毎日、行われるのが朝礼だ。小中高校でも朝礼はある。だが、学園の朝礼は密度が濃い。

朝礼は午前8時30分から始まる。人員と健康の確認、身だしなみ点検などや1分間スピーチ、連絡事項などを実施する。かつては服装がゆるんでいたり、ボタンが取れていたら、連帯責任で生徒たちは腕立て伏せ10回が課されていた。ただ、トヨタらしいのは生徒だけが腕立て伏せをするのではなく指導員も連帯責任で腕立て伏せをすること。指導員は余計に生徒の服装をきちんと指導するようになる。

さらに、団体規律訓練というのがある。指揮者の号令に合わせて整列、停止間動作、号令調整を朝礼でやる。わたしは実際に現場を見たが、朝礼で号令に合わせて全員が一糸乱れず動いていた。他の学校でも運動会の前など、整列することはやるが、団体規律訓練はさらに厳しい。「軍隊のようだ」と評する人もいるが、そこまで時代錯誤の気配はない。

朝礼では団体規律訓練もある
撮影=プレジデントオンライン編集部
朝礼では団体規律訓練もある。指揮者の号令に合わせて整列、停止間動作、号令調整を行う。かつては指導員の腕立て伏せも含めて「連帯責任」としていたという

登山、遠泳、そして「技能五輪」のための訓練

訓練の目的は安全、品質、チームワーク。卒業した後、彼らの多くが配属されるのは生産現場、つまり工場である。事故を起こさないよう、自律的な行動ができること。精神を保つこと、そして、仲間に迷惑をかけないための団体規律訓練だ。

このほか、学園で行っている年中行事は次の通りだ。

登山訓練、遠泳訓練、考動訓練、佐吉想歩訓練(豊田佐吉を思い出して徒歩で約60キロ歩く)、園内駅伝、冬季マラソン、海外ホームステイ、地域社会貢献活動。加えて、運動会は年によって実施する。学芸会もまたは学生会が主体となって実施(毎年、12月)する。

もうひとつの特徴が技能五輪に出場するためのモノづくり訓練。学園では1966年から行っている。ただし、学園生でいる間に国際大会に出場することはまずない。国内大会には出ることもあるが、国際大会に出るのは卒業してから参加するのがほとんどだ。

技能五輪にはいくつかの競技がある。トヨタからは学園の卒業生だけが参加するのではなく、全社から選抜された人間が出場する。全国大会を経て、国際大会に出る時は日本代表だ。技能五輪の名前の通り、オリンピック選手と同じ栄誉なのである。