めんどう見を通じてプロの作業者を育てている
学園では独自の行事、イベントで生徒を成長させる。さらに、めんどう見というトヨタ独特の教育方法で生徒を育てる。
普通の高校、職業高校とは教育法に大きな違いがある。知識だけを詰め込み、現場の即戦力を養成しているわけではない。考えて働く人間、働いていることに熱中する人間、何事があってもあきらめない人間を育てている。
それはモノづくりとは単に目の前の機械を組み立てることではないからだ。モノづくりとはすそ野の広い、懐の深い仕事だ。現場で働きながら、「もっといいクルマを作ろう」と考える仕事だ。そうでないと、完成した車はよくならない。モノづくりのプロが作った製品は車に限らず、涙が出るほど感動するものだ。トヨタ工業学園はめんどう見を通じてプロの作業者を育てている。
学園高等部の生徒は2年生になると工場、生産拠点で実習を行う。1週間ごとに学園と工場(職場)で学ぶわけだ。職場に行く週では鋳造科専攻の人は鋳造部、塗装科専攻の人は塗装部というようにそれぞれが専攻した職場で実習する。
学園、職場それぞれに指導員がつく手厚さ
実習へ行ったら、職場には「学園教育委員会」が設置されている。学園教育委員会とは職場に実習に来た高等部や専門部の生徒を見守る組織で、受け入れの窓口だ。職場のなかにいる担当(学園幹事)が学園と連携して実習を企画し、推進していく。
実習時のめんどう見は職場にいる「学園幹事」が担当する。学園幹事は職場における生徒の指導役だ。
学園幹事は各部門、工場から選出される。つまり、学園では指導員が生徒を育て、実習先の工場では学園幹事が生徒を育てる役割を果たす。任期は2年以上で、訓練生の育成に相応しいとされる人間が幹事になる。
やることは育成計画の立案・推進、心身指導、めんどう見、幹事会、式典への出席など。生徒の指導員であり、親代わりでもある。大変な仕事だと思う。