地方国立大学の中でも名門の一つと言われる金沢大学が、2023年にクラウドファンディングを行った。老朽化したトイレの改修費300万円が捻出できないというのだ。日本の国立大学に一体何が起きているのか。朝日新聞「国立大の悲鳴」取材班のリポートをまとめた『限界の国立大学』(朝日新書)より、一部を紹介する――。
和式便器
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国立大学協会が緊急記者会見を開く事態に

「もう限界です」。2024年6月、全国86の国立大学で作る国立大学協会の永田恭介会長(筑波大学長)が急遽きゅうきょ記者会見を開き、異例の声明を発表した。

教職員の人件費や研究費に充てる国からの運営費交付金が減らされたうえ、ここ数年の光熱費や物価の高騰が重なり、各国立大学の財務が危機的な状況にあると説明。国民に対して、「運営費交付金の増額を後押ししてもらいたい」と訴えた。

法人化された04年当初よりも減額されたとはいえ、今も国立大学全体で1兆円を超える運営費交付金を受け取っている。それなのに、なぜこんな悲鳴が上がるのか。危機的な財務状況に陥った国立大学では今、どんなことが起きているのか。

金沢大学の学生一人ひとりが安心して使えるトイレを、少しでも増やしたい――。金沢大学は23年秋、キャンパス内のトイレを改修する費用を集めるためとして、クラウドファンディングを行った。

移転後30年で改修時期が到来したが…

同大が、金沢市中心部から、郊外の山あいの現在地に移転して30年余り。一気に改修時期を迎えたトイレの便器は当時、約300あった。

たかがトイレと思うなかれ。この30年で大きく増えた女子学生にとっては、特に譲れない問題だという。同大では数多く設置されている和式は敬遠され、「洋式待ち渋滞」が発生。「休み時間にトイレに行けない」といった不満も寄せられ、大学としても放置できない状況になっていた。