節電のため図書館開館を短縮、蔵書も廃棄

悪影響は、学生の学びに欠かせない図書館にも及んでいる。22年以降、電気代の高騰などを理由に、東京大学や大阪大学、九州大学、北海道大学などで、開館時間を短縮する動きがみられた。開館時間を1〜3時間程度短縮したり、それまでは開けていた休日や祝日を休館にしたりしたのだ。エアコンに使う電気代を節約するために、図書館を含めたキャンパスの夏の一斉休業期間を延ばした大学もある。

朝日新聞「国立大の悲鳴」取材班『限界の国立大学』(朝日新書)
朝日新聞「国立大の悲鳴」取材班『限界の国立大学』(朝日新書)

泣く泣く図書館費を減らす大学も増えている。海外大手出版社の寡占かせん化による学術誌や電子ジャーナルの高騰も拍車をかけ、購入する書籍を大幅に絞り込む大学も多い。

東海地方にある大学の教授は、国立大学の図書館の予算不足を実感している。書庫のスペースを広げることができないなか、新しい書籍を入れるために、古い蔵書を廃棄することが増えているという。

「廃棄される本の中には、もう市場では手に入らない貴重なものもある」。教授はそう嘆き、ある大学の図書館が廃棄しようとしていた蔵書を100冊近く引き取ったこともある、と打ち明ける。

予算が足りないことが、教育の高度化を妨げ、さらには劣化につながる。朝日新聞のアンケートには、そんな懸念を訴える声が数多く寄せられた。

ある大学の文学部に所属する准教授は、教育のために使える予算が減らされた結果、現代の学生のために必要だと考える授業改善に取り組めずにいる。この准教授は、データサイエンスを使った研究手法を授業に生かしたいと考え、教材を作るなど準備を始めたという。だが、文学部に回ってくる予算が少なく、必要な機材類の手配が難しかった。「学生に新しい手法を教えたいが、今のままではできない。古いタイプの教育から転換できずにいる」と嘆いていた。

金沢大学の社会科学系の教授は、「必要な経費が回ってこない」と悔しがる。予算不足で非常勤講師の待遇悪化や技術支援スタッフの削減などが続き、「実習などの教育に悪影響が出ている」とも訴える。