「女子枠」を設置する以前の問題
大半の国立大学は、教育・研究の発展には多様な人材が交わることが必要だと考えている。政府も、多様かつ優秀な人材を確保したい産業界などの要請を受けて、工学部を中心に女子学生を増やそうと躍起になっている。このため、ここ数年、入試に女性しか受験できない「女子枠」を設けたり、女子中高生だけを対象にした説明会を開いたりと、女子学生を増やすために、あの手この手の対策に取り組む国立大学が増えてきた。
教育や研究の内容、入試方式などが重要であるのは言うまでもない。だが、学生は学部だけでも4年間、大学院の博士課程まで進むと、10年近く大学に通うことになる。長い時間を過ごすキャンパスの環境もまた、女性が気持ちよく学び、研究を続けるために重要な要素の一つだ。
かつてはバンカラのイメージが強かった大学も、キャンパスをリニューアルした際には、きれいなトイレをアピールポイントの一つにしていた。女性を積極的に受け入れる姿勢を示す格好のアピール材料となるからだ。例えば明治大学は、今や女子高校生の人気が非常に高い大学として知られるまでになっている。
交付金は減額、授業料は20年据え置き
一方で多くの国立大学では、トイレに限らず老朽化した建物や設備が目立つ。やはり、運営費交付金が減額された影響が大きい。経済的な事情で進学を断念する若者を増やしたくないと、大半の国立大学が05年度から授業料を据え置いていることも、厳しい財務状況の一因となっている。
国の科学研究費補助金(科研費)などの競争的資金や企業との共同研究、寄付といった外部資金の獲得を進めている大学も、状況はあまり変わらない。「この研究に」「あの設備に」などと使途が限定されていることが多く、教育関連の施設・設備の改修に自由に使うことができないという。