「選択と集中」という政府の掛け声のもとに運営の見直しが進められてきた国立大学。だがその結果、研究者の「非正規化」や人減らしが横行している――。
※本稿は、朝日新聞「国立大の悲鳴」取材班『限界の国立大学』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
要求スペックは高いのに…
「年収300万〜500万円、任期3年、学歴は修士以上」
「助教相当、年収500万円〜、任期5年、学歴は博士」
「助教相当、年収500万〜700万円、2028年3月末のプロジェクト終了まで、学歴は博士」
国立大学教員の求人をインターネットで調べると、こんな条件が並ぶ。目立つのは任期が決まっているポストの公募だ。
大学教員の任期制は、「教員の流動性を高めることにより、教育研究の活性化を図ること」を目的とし、1997年施行の「大学教員任期法」によって始まった。当時から、地方大学に人が集まらなくなることへの懸念や、立場が不安定化することによる研究への悪影響といった理由で反対する意見もあった。
しかし、国立大学で任期付きの教員は増えていった。国立大学協会の調査によると、2023年度の任期付き教員の割合は32.3%。年度と比べても、26.3%から6.0ポイント上がっている。任期を延長する場合もあるが、そのためには業績が必要となる。
短期間に成果を残すことが必要とされ、もし成果を出せなければ、次のポストを求めて就職活動も並行して行わなければならず、落ち着いて研究ができないといった指摘がされている。このように研究に集中できない環境であることが、日本の研究力低下につながっているのではないか。そう批判する声もある。

