入試直前期に「予備校閉鎖」の衝撃
大学入試直前の時期に、東京都新宿区にある大学受験予備校「ニチガク」が、突然教室を閉鎖したことで動揺が広がっています。運営する会社の日本学力振興会(東京都新宿区)が資金繰りに行き詰り、破産する見通しとなったと報じられています。
在籍していた受講生は約130人で、中には今年これから受験する生徒もいて「かなりびっくりした、誰も知らなかった」「張り紙だけで済ませて誠意を感じられない、許せない」などという声が上がっていると、NHKやテレビ朝日が報じています(*1、*2)。
*1 NHK「大学入試前に予備校が突然教室閉鎖 破産へ 受験生『ショック』」2025年1月6日
*2 テレビ朝日「渦中のニチガク社長を直撃取材『心が痛い』入試直前に予備校閉鎖」2025年1月7日
また、Xなどのネット上でも、「なぜこの受験直前の大切な時期に閉鎖するんだ。受験生がかわいそうだ」という意見が多数でしたが、一部には「少子化の時代において、これも仕方ないんじゃないか」という意見もありました。
さて、自分は教育関係の会社を営んでおり、東大生たちにアンケートを取る機会が多くあります。東大生がどんな塾に行っていたのか、どんな塾ならのびのびと学べて、親も気持ちよくお金を払っているのか、ということも調べています。また、自ら学習塾を運営しているわけではありませんが、塾向けのサービスを提供させていただいている経緯から、この業界を俯瞰して見ている立場でもあります。
そんな自分が今回の件について感じたことや東大生の塾に対する考え方にあわせて、子供を「入れたほうがいい塾」や「入れないほうがいい塾」の見分け方について、お話しさせていただきたいと思います。
“子供のスポンサー”はむしろ充実している
まず前提として、「少子化の時代だから学習塾は苦境である」というのは間違いであると考えています。なぜなら、学習塾業界自体の市場規模自体は、少子化の時代にあってもどんどん大きくなっているからです。
2013年に約4040億円だった市場規模は、10年後の2023年には約5812億円に増えています(*3)。
*3 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(2024年のデータは公表前)
「少子化」とセットで「高齢化」も進み、子供の数が減っていても、その子供の「スポンサー」となり得るおじいちゃん・おばあちゃんの数は多いと見られます。
例えば、日本の人口のうちの子供の数を見ると、1965年の15歳未満の人口は約2500万人でしたが、2020年には約1500万人で、その後も減っています(*4)。
*4 総務省「我が国のこどもの数」
子供の数が減っているのは事実なのですが、これは全体の分母という議論で考えると違ったことが見えてきます。日本の総人口は1965年に1億人足らずでしたから、15歳以上は7000万人余りとなります。それが、2020年は1億2500万人程度なので、15歳以上は約1億1000万人となります。
そう考えると、1人の子供に大人が3人足らずしかいなかった時代から、現在は1人の子供に7人の大人がいる時代に変化しているわけです。生徒たち1人に関わる大人の数は昔より何倍も多いと考えられます。