「質問時間」は授業よりも重要

生徒はいくらでも質問していいわけですが、先生側はあくまでも仕事として質問対応をしており、賃金が発生します。どんなに質問が多くても、その分、生徒からお金を取るわけではないところが多いですから、何人の生徒に対応しようとも、何時間生徒に対応しようとも、追加でお金がもらえるわけではありません。

そのため、経営が厳しくなってしまった塾や、余裕がない塾だと、この「質問」部分の稼働時間を真っ先に削る傾向にあります。経営者から「質問対応の時間は短くするように」という指示があり、長く質問対応していると逆に怒られる、なんて塾もあります。

しかし、この質問対応のクオリティが低い塾というのは、実は長期的に見てうまくいかない場合が多いのです。というのも、東大生にアンケートを取ると、「なんのために塾に通っていたか」という問いに対して、「質問対応の時間で、先生に質問したいことを聞くため」と答えた人の割合はかなり多かったのです。

東大生は、めちゃくちゃ質問を重視します。毎回の授業の後で先生に対して質問して、先生から顔を覚えられるくらいになっていた、という東大生はとても多いのです。ちゃんと勉強しているからこそ、聞きたいことも多く出てくるわけです。

生徒にとって、質問対応はとても大切な時間であり、授業の理解度や学習の進捗状況を大きく左右します。ですから、「実際の授業」よりも重要な時間だとも言えます。

塾の先生と生徒
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「良い塾」は質問しやすい環境を整えている

またこの時間で、生徒と先生・チューターが仲良くなるという面があります。これは口コミにも良い影響が出ます。何度も質問に来る生徒と先生は仲良くなり、人間関係が構築されるので、この質問対応の時間のクオリティこそがその塾の評価に直結すると言っても過言ではないのです。

ですから「良い」と言える塾は、生徒に対する丁寧な質問対応に時間的にも金銭的にもリソースを投じています。生徒が質問しやすいような環境を整えたり、先生側から生徒に積極的に話しかけて質問を促したり、質問対応のための人員が足りなければそこに人手を割く塾もあります。

また、実績のある塾の先生も、生徒がたくさん質問や勉強の相談をしに来ることを喜んでいる場合が多いです。第一志望に合格する生徒を多く輩出する塾の先生から話を聞くと、「ちゃんと多くの生徒から質問や勉強の相談が来るような授業=よい授業」と定義しているケースが多い印象です。

「ここについてわからなかったら後で聞きにきてください」と授業中に言って、質問に来ることを求める場合もあります。