受験会場に向かうわが子に、どんな声をかければいいのか。東大生作家の西岡壱誠さんは「『合格できる?』『頑張って!』という声かけはやめたほうがいい。入試当日はこれまで頑張ってきたことを褒め、気持ちよく送り出してあげるのがベストだ」という――。
室内で勉強中の女子学生
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東大生の親に“お受験ママ”は少ない

大学入学共通テストが始まります。いよいよ試験本番が近付いてきて、「受験生のわが子に、どのように接すればいいかわからない。どんなふうに声をかけたらいいのか?」と親御さんから質問を受けることが多くなってきました。

どんなふうに接すればいいのか……。なかなか答えが出ない難しい問いですが、今回は、東大生の親御さんが受験本番直前にどう接していたのかについて、お話しさせていただければと思います。

まず、そもそもの前提として、東大生の親御さんに対してみなさんはどんなイメージを持っているでしょうか? おそらく、「すごく厳しく」て、「子供に勉強を強制」し、受験期にも「あんた、合格できるの? 大丈夫なの? もっと必死に勉強しなさいよ」とプレッシャーをかけている「お受験ママ」のイメージが多いのではないでしょうか?

僕たちの会社では東大生にアンケートやインタビューをして実情を調べていますが、実際に分析してみると、そういう親御さんは本当に少なく、むしろ逆であることに驚かされます。

親から「合格できる? 大丈夫?」と聞かれていたという家庭は本当に少なく、むしろ「体調は大丈夫? 風邪ひかないようにね」とか「あんまり遅くまで勉強していちゃダメだよ」という声かけをされていた家庭の方が多かったのです。勉強に関しては子供に任せ、受験についても最低限の話しかしなかった、という家庭ばかりでした。

「子供の受験勉強」に口を出さない

もっと言えば、受験そのものに関しても、子供が自分でしっかり考えているなら何も口出ししない、という態度の親御さんも多いようです。

例えばどこの家庭でも、模試の成績や判定、自分のテスト結果などを親御さんに見せるのは当たり前にある状況だと思いますが、東大生の親御さんの中には、模試やテストの成績を見せることを要求せず、高校3年間で一度も「テストどうだった?」「模試の結果、どうだった?」と聞かれなかったという家庭もありました。

受験期においてもこれは同様で、合格できるかどうかは一切尋ねられず、勉強に関して口出しされなかったという家庭は多いです。60人の東大生にアンケートを取った時にも、40人の東大生が「大学受験のときに勉強についてあまり口出しされなかった」と回答していました。約7割の東大生が、受験について口出しされていなかったのです。意外ですよね。

どうして口出しされないのか? これについて、漫画『ドラゴン桜』の作者であり、多くの東大生の家庭を分析していた三田紀房先生は面白い考察をしています。東大生の親御さんは、「そもそも子供が合格しようが、不合格になろうが、どっちでもいい」と考えている場合が多いのだそうです。