親が心配したところで、合格率は上がらない
“子供が合格したら嬉しい”とは思うけれど、それは「こんなに頑張っているのだから、報われてほしい」と思っているだけで、もし第一志望が不合格になってしまったとしても、親御さんとしては「そこまで深刻に捉えなくていい」と考えている場合が多いというのです。もっと言えば、「まあ、こんなに努力できる子供に育ったのだから、もう自分の子育ては終了したようなものだな」と考えている場合が多いのだそうです。
そもそも、受験ってなんのために挑戦するものなのかと立ち返ると、もちろん「いい学校に行くため」と答える人も多いでしょうが、それ以上に、「自分を成長させるためのチャンス」でもあると考えられます。学歴を得るだけではなく、受験本番の日まで努力して、人間的に成長して、試験会場で全力を出すことができるのならば、それだけでもう受験の目的は、半分は達成されていると言えると思います。
そういう意味では、三田先生の考察も踏まえると、受験のために努力を重ね、自分を成長させるチャンスをうまく活かして、いい大学を目指している……ということだけで、結果に関係なく子育ては成功した/終了したとも解釈できます。だからこそ、多くの東大生の親は、受験に関してとやかく聞いたり、声かけしたりしないのだと考えられます。
また、受験について親御さんが聞いたり声かけしたりしても、かえってプレッシャーをかけるだけで、あまり良い効果がないとも思います。心配を口にしたところで、合格率が高くなるわけではないからです。むしろ合格率は下がってしまうかもしれませんから、親御さんは口出ししない方がいいと思います。
“試験を無事に受けられるよう”サポートする
ちなみに、東大生の親御さんにインタビューをしていると、「合格発表の日ではなく、受験が終わったタイミングでお祝いをしている家庭」が複数いることに驚かされます。普通はお祝いって、合格発表のタイミングですよね。でも東大生の親御さんの中には、「受験お疲れさま」のタイミングでお祝いをする家庭も多いのです。これも、合格に拘泥していない人が多いということだと考えられます。
では、「受験の結果に拘泥しない」東大生の親御さんは、どんな声かけをしていたのか? これは非常にシンプルで、「しっかり試験会場に着いて、受験できるように」ということだけを考えているようでした。
例えば「体調大丈夫?」と身体を心配したり、「明日は雪が降るらしいから気をつけてね」と試験会場に辿り着けるようにと声かけをしたり。とにかく子供がしっかり試験を受けられるようにサポートすることを意識しているケースが多かったです。試験会場に無事に辿り着いて、しっかりと受験ができるようにバックアップしてあげるような内容です。
試験当日の朝の天気を伝えて、「明日はとても寒くなるらしいから、こんな服を着ていったらいいんじゃない?」と声をかけてあげたり、試験の日の朝ごはんやお弁当をどうするかを考えてあげたりと、試験会場でフルパワーを出せるようにサポートしてあげるのです。そしてそれ以上は関わらない、という態度でいるのがいいと思います。