運がいい人はどんな行動をしているのか。社会学者の太田省一さんは「コメディアンの萩本欽一さんは運を引き寄せるため独自の法則を持っている。一見不可思議な行動だが、それは彼の背景を考えると理に適っているように思える」という――。(第3回)

※本稿は、太田省一『萩本欽一 昭和をつくった男』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

スタッフと出演者を集めてあみだくじを引かせる

萩本欽一ほど運の良し悪しに敏感なひとはいない。野球でも、運が良くなっていそうな選手を見極めて抜擢するのが監督ならぬ「欽督」としての仕事になっていた。

もちろん、テレビ番組をつくるときもそうだった。萩本欽一と運に関する驚きのエピソードには事欠かない。『欽きらリン530‼』では、こんなことがあった。

スタッフと出演者全員分のあみだくじをつくり、引いてもらう。ひとつだけ○が入っている。それを引いた人間を番組でプッシュしていくと萩本は宣言した。それを引いたのが、勝俣州和だった。×もひとつだけある。「悪いけど、それを引いたひとにはこの番組から外れてもらう」と萩本は宣言し、実際それを引いたスタッフは番組から外れることになった(前掲『SmaStation!!』トクベツキカク)。

自分の運についても同様である。『スター誕生!』の親睦会でゴルフをやることになった。当日は快晴。絶好のゴルフ日和である。ところが晴れ渡った空を見た萩本は、まだ始まってもいないのに「よし、帰ろう」とマネージャーに言った。驚いたマネージャーが「何で?」と聞くと、「こんな日に家に帰って企画練るなんて画期的。考えつかないことだもの。だから当たるよ。帰ろう」と答えた(萩本欽一『まだ運はあるか』52〜53頁)。

完璧なショットを放つゴルファーの後ろ姿
写真=iStock.com/ArtMassa
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