昨年末から『週刊文春』、文春オンラインにおいて女性への性行為強要、性加害疑惑が報じられた松本人志。文春側を損害賠償請求で訴えるとして芸能活動を自粛していたが、11月8日、所属の吉本興業が「訴えを退ける」というプレスリリースを発表。コラムニストの藤井セイラさんは「このリリースは巧妙に言葉を選んでおり、松本人志が被害を訴えた女性たちと和解したと誤読する人もいるが、そうではなく、実質的には性加害の報道を否定できなかったということになる」という――。

松本人志が文春相手の訴訟取り下げ、「勝ち目なし」と悟ったか

松本人志が復帰に向けて動きだしたが、反対の声が広がっている。2024年11月10日、X(旧ツイッター)では「#松本人志をテレビに出すな」というハッシュタグが約半日で10万件を超えて投稿され、トレンド入りした。

吉本興業から11月8日に出たプレスリリースは、一見、何事もなかったかのような体裁を装っている。しかし、少し気をつけて読めばその意味するところはわかるはずだ。

吉本興業オフィシャルサイト「弊社所属タレント 松本人志に関するお知らせ」より
吉本興業オフィシャルサイト、プレスリリースより

「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました」
「女性らが参加する会合に出席しておりました」これはつまり、

・女性たちが(呼ばれて)参加する会合があった
・(その会合であった性行為の)強制性の有無は、間接的にはわかっている
・(性行為の)物的証拠はないが、証言などはある

ということだろう。

新喜劇さながら「これぐらいにしといたるわ」

吉本のプレスリリースでは、冒頭に「松本人志の代理人弁護士より(中略)裁判を終結した旨の連絡を受けました」と書き、あたかも、裁判が無事に終わったかのようなイメージを演出している。

しかし、そのあとに「訴えを取り下げることといたしました」とあるので、実は、判決が出る前にやめにしました、ということだ。

『週刊文春』で性加害が告発されたときは、みずからのXで「事実無根なので闘いまーす!」(2024年1月8日)といきり立ち、清廉潔白であることを明らかにすべく裁判に集中するといって芸能活動を休止し、『週刊文春』を名誉毀損きそんで訴えたのは他ならぬ松本人志である。自分で訴訟を起こしておきながら、自分でやめるのはなぜか。おそらく勝ち目のないことがわかったからではないか。

吉本新喜劇ではないが、イチャモンをつけておいて「フン! 今日はこれぐらいにしといたるわ!」と肩をいからせて帰っていくアレである。そういうことは、なんばグランド花月でおやりになればよろしい。