※本稿は、藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
年代と意欲・能力によって異なる離職の要因
これまで、会社に対するニーズが満たされなくなったときに離職の動機が生まれるため、部下のニーズを把握し、それに対応することが重要だとお伝えしてきました。
そのニーズは年齢や仕事への意欲・能力の高さによって異なり、そこには一定の傾向があります。
そのため、経営心理士講座では、年代を20代の新人若手、30~40代の中間世代、50代以上の年長世代の3つに分け、それぞれの年代を意欲・能力の高さでさらに上位、中位、下位に分け、図表1の9つのカテゴリーに分類し、ネーミングしています。
今回は新人若手・上位【ホープ】のニーズの傾向について説明し、それを踏まえて離職の要因と対応についてお伝えしていきます。
リアリティショックによる離職が多い
新人若手・上位【ホープ】のカテゴリーの人は、向上心が高く、仕事に対する意欲も旺盛であり、仕事を通じて力をつけていきたいという20代の新人や若手です。
このカテゴリーの人は成長欲求が強いため、成長欲求が満たされないことによる離職が多い傾向にあります。
アメリカの組織心理学者E・C・ヒューズ氏によって提唱された「リアリティショック」という言葉があります。これは新入社員などが、入社前に仕事に対して抱いていた理想と入社後の現実とのギャップに戸惑う状態をいいます。
このカテゴリーの人は、今後の時代に必要な経験やスキルを身に付けたいというキャリア形成の意識が強く、明確なキャリア計画がある人もいます。そのため、キャリア形成に関するリアリティショックが離職の要因となりやすい傾向にあります。
また、現代は市場の変化が激しく、さまざまな変化に対応できるようにするため、幅広い経験を積んでおきたいと考える人もいます。
例えば、営業であれば個人営業だけでなく法人営業も経験したい、1つの商材だけでなく複数の商材の営業を経験したい、などです。
そのため、この会社では欲しい経験やスキルが得られないと思うと離職を考えます。
このカテゴリーの人はどこの企業も喉から手が出るほど欲しい人材であり、行動力もあるため、すぐに転職先も見つかることから、離職を考え始めてから離職するまでの時間が短い傾向にあります。