人間関係がつらいから辞めたいという女性

ある不動産会社では、ベテラン営業マンが数多くいる中、20代の女性社員が常時TOP3に入る営業成績を残します。ところがその女性から退職の申し出がありました。

驚いた社長が理由を聞くと、給料は売上に比例する歩合制で、営業成績は社内に貼り出され、周りの社員は自分がいくらもらっているかがわかる。それがやっかみとなっている。営業は楽しいが、人間関係がつらい。だから辞めたいとのこと。

「じゃ、給料はだいぶ下がるけど、一般職員と同じ固定給にして営業成績を貼り出すのをやめようか」と社長が言うと「いいんですか? だったら辞めません」と言われ、社長も「え⁉ 本当にいいの?」と唖然としたといいます。

彼女の営業成績だと、歩合給から固定給に変えると給料が4分の1ほどになってしまう。でもやっかみをもたれるよりは給料が4分の1になったほうがいいと言う。それで固定給にしたところ、意欲的に営業に取り組んでくれているとのことです。

この話に驚かれる方も多いかと思いますが、彼女にとっては高い給料をもらうことより、人間関係のストレスなく働けることのほうが重要なのです。

ここまで極端な例ではないにしろ、同じような話は他でも聞きます。こういったところからも、人間関係でストレスを感じたくないというニーズの強さを感じます。

仕事への意欲や能力は高い、でも人間関係のストレスには弱い。

そういう人には人間関係のストレスをなるべく感じない状況を確保し、意欲的に長く働いてもらいましょう。

ビジネスマンのグループ
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
※写真はイメージです

部下の育成を放棄しない

このカテゴリーの人の中には、最初からキャリアアップの転職をするつもりで入社してくる人もいます。

そういう人は入社と同時に転職サイトに登録し、今の会社ではこれ以上必要な経験やスキルは得られないと判断すると転職します。

そういう人でも、これまでお伝えしてきた関わりを行うことで、自社に強い魅力を感じてもらえれば転職を防ぐことはできます。

ただ、それがうまくいかない場合は転職を食い止めることが難しくなります。

こういった転職によって部下が辞め、育成にかけた時間が無駄になることを繰り返し経験すると、その上司は次に新人が入っても「どうせあなたもすぐ辞めるんでしょ」と指導に消極的になり、それによってまた新人が離職する負の連鎖に陥ることがあります。

その点に留意して、部下の離職を繰り返し経験しても、部下の指導が疎かにならないように心がけてください。

と、こうやって書くのは簡単ですが、これはいざやるとなると大変なことです。

これが売り手市場におけるマネジメントのつらさです。

今、多くの会社でこういったことが起き、現場の上司は悪戦苦闘を強いられています。しかし、結局最後に勝つのは、それでも諦めずに部下と関わり、部下を定着させ、育てることができた会社です。

ですので、つらいのはよくわかりますが、ここが肝心なところだと意識してください。そこでさじを投げると、会社の成長とご自身の上司としての成長は止まるのです。