外資系企業でたくさんの業務をこなせる人は何が違うのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「多数の業務を並行して進められる人は、さまざまな業務を俯瞰して見ることができている。加えて、しっかりとオフを取って仕事に緩急をつけ、作戦を立てて臨んでいる」という――。
コーヒーを飲みながらオフィスで話をする2人のビジネスマン
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「仕事がつらい」の内容はさまざま

こんにちは。産業医の武神です。私は毎月100件以上の産業医面談をしていますが、その中で毎月一定数あるのが、仕事がつらいという相談です。

仕事のつらさはさまざまです。多すぎる残業、プレッシャー、タイムリミット、人間関係、そもそも仕事が面白くないなど、本当にいろいろな理由があります。今日はその中でも、決して残業が多いわけではないけれど、業務が多くて毎日が忙しい職場において、仕事をこなしている人たちと、そうでない人たちの違いについて述べたいと思います。

Aさんは新卒で入社し昨年昇進した業務部の20代後半の女性でした。過去にも何度か産業医面談に来たことがあり、Aさんはいつも率直にその時々の状況を教えてくれました。昇進後の様子を聞くと、業務範囲が広がったこと、後輩ができたこと、残業はさほどせずに帰れていることを教えてくれました。

日中の業務が忙しすぎて睡眠障害に

「順調だね」と私が言うと、「そんなことない、日中が忙しすぎて、もう持たないかもしれない」と言い始めました。詳しく聞いてみると、昇進したもののまだ部署内では若手のため、日々のルーチン業務は同じものを任されている。その上にさらに担当業務が増えたため、明らかに業務過多であること、残業は意地でもしたくないためなんとか日中に終わらせているが、日中はトイレに行く時も早足になっているとのことでした。最近では、朝のアラームは7時なのに6時になぜか目が覚めてしまうようになったことを心配し、今日は産業医面談に来たのでした。

残業が増えたわけではないけれど、日中の業務の密度が濃すぎる。これが緊張感を生み出し、毎朝予定よりも早く目が覚めてしまっている原因であると推測されました。典型的な「早期覚醒」という睡眠障害の一種です。幸い頻度は少なく、また、他の症状はなかったため、まだ医療受診を勧めるほどではないと判断し、気分転換や本人ができそうな睡眠前の習慣についての話をさせていただきました。

そしてこの面談中の雑談の中で、私が他社で見てきた、同じように残業はなくても業務が多く、就業中は密度の高い時間を平然とこなせている人に共通する点についてお話しさせていただきました。