忙しくても元気な人はどんな週末を過ごしているのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「休息を意識しすぎて週末の2日間とも予定を入れなかった結果、メンタル不調になる人をたくさん見てきた。平日は忙しくても、週末に数時間でも遊びに行ったり人と会ったりできている人は、翌週からまた元気に働けることが多い」という――。
朝起きて伸びをする男性
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働きやすい職場に転職したのにメンタル不調に

こんにちは。産業医の武神です。私は10年以上の産業医面談経験で1万人以上の働く人たちと面談をしてきました。その経験から気づいたことは、人は週末の過ごし方を少し変えただけで、メンタル不調になる場合も、元気になる場合もあるいうことです。

今日は、週末の過ごし方でメンタルヘルスのあり方が変わった人たちについてお話したいと思います。

A君は私のクライエントの会社に転職してきた20代後半の静かな男性でした。半年ほど経って調子が良くないと自ら産業医面談にきた時には、睡眠障害、朝に強い憂鬱感、食欲低下、若干のセルフネグレクト傾向を認め、医療受診を勧め休職となりました。

当初私は、A君の不調の原因は、新しい職場への適応疲れかと思いました。しかし、聞いてみると、新しい職場は働きやすく、また、ストレスに感じるような人もいないとのことでした。プライベートでは数年間彼女がいないのは変わらず、ご家族関係においても特に心当たりになるようなストレス原因はありませんでした。人事がA君の上司に話を聞いても、部署全体としてさほど残業はなく、皆淡々と仕事を行う部署なのでストレス度もさほど高くないはずとのことです。仕事ぶりも特に目立って云々というものはなく、A君の不調を知り、上司も驚いていたとのことでした。

原因は「引きこもり的な週末」だった

休職して1~2カ月間経ってもあまり元気になることがないA君でしたが、8月になり実家に戻ると、秋には別人のような元気な顔になり復職面談に来たのが印象的でした。

A君が教えてくれたところでは、前職は同年代の同僚が多く、週末になれば誰かの家でお鍋やバーベキュー、麻雀などをしてワイワイ過ごすことが常だったが、転職後、今の部署には同年代がおらず、上司や同僚たちは皆家庭がある人ばかりで、飲み会や週末の“集い”がなかった。毎週末どこにも行かず家で過ごしている間に、週末は規則正しい生活をしなくなり、次第に気分が落ちたままになってしまっていた。休職後もそれは変わらなかったが、実家に戻り高校の同級生たちと遊んでいると次第に規則正しい睡眠が取れるようになり、元気になってきた。日常生活の中に楽しみがなくなってしまったことと睡眠リズムが崩れていたことが、自分の不調の原因と分析しているとのことでした。

自分から人を誘って何かをする性格ではないと自己分析するA君は、復職後は引きこもり的な週末を過ごさぬよう、社内の趣味サークル2つに加入し、週末にもイベントを入れる仕組みを作りました。そして、現在元気に働いています。