褒めどころがない部下にはどう接すればよいのか。経営心理士の藤田耕司さんは「『どこかミスや漏れはないか、不十分な点はないか』という視点でだけでなく、『褒めるところはないか』というアンテナを張って部下の仕事ぶりを見ると、部下のよいところが見つかる。それを言葉にして部下に伝えることで部下との信頼関係が築ける」という――。

※本稿は、藤田耕司『離職防止の教科書 いま部下が辞めたらヤバいかも…と一度でも思ったら読む 人手不足対策の決定版』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

上司の反応が仕事の面白さに影響する

私の知り合いに、メーカーでマーケティングの仕事をしているS氏がいます。

彼女は前職でもマーケティングの仕事をしており、その経験を生かせる仕事ということで今の会社に転職しました。

転職の理由を聞くと、前職は仕事が面白くなかったとのこと。ただ、仕事の内容は今の会社もそれほど変わっておらず、その点に関して彼女はこう話してくれました。

「前職の上司は、仕事はできて当たり前、仕事に不備があると厳しく叱るという人だったので、褒められたことはないです。仕事をどれだけ頑張っても次のタスクが降ってくるだけ。なので仕事が面白いと感じたことはなかったです。

眠そうなビジネスマン
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
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フォローしてもお礼の一言もない上司

あるとき、その上司の連絡漏れで問題が起きて、夜の3時までかかって何とか対応したことがありました。さすがにこれはお礼の一言くらいあるだろうと思い、上司に報告したところ、『了解。結構時間かかったね。で、○○の件はまだ終わらないの?』と別の仕事の進捗を聞かれました。あのとき、『この人には血が通ってない』と思いました。それで、もうこの会社辞めようって思いましたね。

その後、転職して今の職場に来てみたら、良い提案をしたら上司が褒めてくれて、ちょっとしたことでも『ありがとう』と言ってくれるんです。職場によって上司の雰囲気ってこんなに違うんだと驚きました。なので、同じ仕事でも面白さが全然違うし、やりがいを感じます。朝の寝起きも良いです」

S氏の気持ちがわかるという方も多いのではないでしょうか。

上司の関わりによって、部下の関係欲求が満たされるかどうかで、部下の仕事の面白さややりがいは大きく変わります。そして、それが離職率にも影響します。