トヨタ自動車が「稼ぐ力」を取り戻しつつある。収益改善に向けて重い足かせとなっていた国内事業について、回復基調が鮮明になってきたからだ。2月5日に発表した2013年3月期の業績見通しによれば、国内事業の収益を示す単体決算は、本業での儲けを表す営業損益で、従来見通しの200億円の赤字から1500億円の黒字へと大幅に上方修正した。黒字転換は5年ぶりで、文字通り「ドル箱」としてきた米国市場も本格復調し、円高修正の流れも追い風にして、「最強企業」復権に勢いを増している。
単体決算で営業損益が黒字になるのは、「リーマン・ショック」直前の08年3月期以来で、4398億円の赤字を計上した12年3月期からのV字型回復となる。“お家芸”の生産合理化効果などで、「1ドル=79円でも単体で100億円の黒字化のめどを付けることができた」(伊地知隆彦取締役専務役員)。
体質改善が寄与したのに加えて、安倍晋三政権が進める経済政策「アベノミクス」などによる円高修正による輸出採算の改善が利益を嵩上げした。これによって、豊田章男社長がこだわってきた「国内生産300万台」の死守にもめどが付いた。同時に、13年(暦年)に140万台と予想していた国内販売台数も、上方修正の検討に入った。
国内事業の復調によって、海外での稼ぎを国内事業が蝕んできた収益の構図も解消に向かう。同時に発表した13年3月期の連結営業利益も従来予想から1000億円上方修正し、1兆1500億円と前期の3.2倍を見通す。リーマン・ショックと大量リコール問題で苦しんだ米国市場も、ウォン高で苦しむ韓国・現代自動車を尻目に好調に推移し、完全にドル箱市場に戻りつつある。
「稼ぐ力」を取り戻したトヨタは、前年から5%程度の伸びが予想される米国市場と合わせて、成長の伸びしろが広い新興国市場での販売を強化し、12年に2年ぶりに世界販売台数(日野自動車、ダイハツ工業を含む)で首位の座に返り咲いた勢いをテコに、世界ナンバーワンの地位を不動にする意向だ。
日本の自動車大手は、中国シフトが裏目に出た日産自動車や欧州市場で苦戦するホンダが、それぞれ13年3月期の連結営業利益見通しを据え置いている。円高修正の流れに乗れぬ両社とは対照的なトヨタの姿が際立っている。