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トヨタ自動車社長 豊田章男(とよだ・あきお)
1956年、愛知県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。82年米国バブソン大学経営大学院修了後、アメリカの投資銀行に勤務。84年トヨタ自動車入社。GMとの合併企業NUMMIの副社長を経て、2000年取締役就任、09年6月代表取締役社長就任。


 

「1年の計は元旦にあり」という言葉があるように、新年になると大きな夢や大胆な目標を語る経営者も多い。トヨタ自動車の豊田章男社長は、新年早々、安倍政権のもとで「日本経済再生の中軸を担っていきたい」と決意新たに臨んだが、2013年の抱負は「平穏無事な1年を願う」と極めて平凡だ。学生時代はホッケー選手として活躍した“体育会系”で、人一倍負けん気の強い性格といわれる社長にしては控えめである。

実は昨年も「良い年は望まない。何も起こらない年でいい」と同じような発言をしていた。それには理由がある。ここ数年、超円高などの「六重苦」のほか、リーマンショック、リコール品質問題、東日本大震災、タイの洪水など御難続き。しかも、昨年はやっと震災などからの回復の足音が聞こえた矢先に、尖閣諸島をめぐる日中の対立による反日デモで、世界最大市場の中国で日本車は打撃を受けた。

「私の平穏無事とは、日々健康で会社に行け、工場が正常に稼働して適正に販売が続けられること。しかし、社長になってからそうした年はまだ一度も経験していない」と苦笑い。

それでも、12年のトヨタの世界販売台数は過去最高。再び「世界一」に返り咲いた。好調なアジアとともに、稼ぎ頭の北米も5年ぶりに前年実績を上回った。政権交代後は、株高と円高修正が加速し、自動車などの輸出企業を取り巻く環境も風向きが変わりつつある。1円の円安が年間350億円の増益要因になるトヨタは、今年度は単体決算でも黒字転換する見通しだ。

今年のキーワードを「原点」とした豊田社長。就任4年目の今年こそ、75年前の創業の精神に立ち返り、新たなステージに向かうための本格起動の年と割り切る。

(写真=PANA)
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