脱リアルタイム視聴率

実は日曜劇場の強さは、脱リアルタイム視聴率が前提となっている。

21年夏「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」や21年秋「日本沈没-希望のひと-」から、TBSはNetflixなど世界に向けて配信するSVOD(定額制VOD)への提供を始めた。併せて無料のVOD・TVerでの配信も重視し始めた。

つまりリアルタイム視聴率を前提とした広告費だけでなく、見逃し配信から得られるネット広告費と、有料配信事業者からの配信権料を収入の三本柱と定めたのである。

結果として主役は若いアイドルではなくなった。

「アンチヒーロー」より
©TBS

中年の演技派が多くなっている。2位を多くとるテレ朝の刑事モノのような、ジャンルの偏りもない。例えばこの1年では、障害者・国際テロ・高校野球・音楽・法律など、テーマを散りばめたエンタメで勝負している。

これでヒットし続けるのは大変だ。

支えているのが、時間をかけて充実させた台本だ。例えていうなら、かつて80年代から12年連続三冠王を続けたフジを、90年代に乗り越えた日テレの戦略が似ている。タモリ・たけし・さんまなど数字のとれる芸人を囲い込んで三冠王を邁進したフジに対して、日テレは企画力で勝負したのである。

ドラマの領域でも似た現象はある。

90年代から一世を風靡したトレンディドラマ路線だ。数字のとれる若いアイドルをブッキングできるか否かが大きなポイントだった。ところがTBSは、企画力ならぬ台本力でドラマを充実させていった。