テレビ局のポートフォリオ

この方針は、見事にテレビ局の収入構造に現れている。

ここ数年、リアルタイム視聴率は激減し、テレビ広告費も落ち込みが激しい。結果として減収減益に追い込まれる局が増えているが、TBSは例外だ。

テレビ広告費の減収分を、ネット広告費とSVODへの配信料で補っている。さらに映画化・イベント・関連グッズなどで増収に成功しているのである。

テレビドラマのフェイズは明らかに変わった。

視聴率という瞬間風速だけでは勝負できない。放送後1週間、クール終了後の数カ月、さらに映画・イベント・グッズなど多様な展開でどれだけマネタイズできるかが重要となった。

そのためには多様な視聴者に深く刺さる要素が必要だ。

「アンチヒーロー」なら、弁護士なのに正義か悪かが明確でない展開だ。逆転パラドックスの連続で、視聴者の常識が揺すぶられ続ける。

「アンチヒーロー」より
©TBS

視聴者層で見ると、「部課長・役員」などの管理職も自分の仕事に応用できるために引き込まれる。検察など権力が敗北すると、「非管理職」や「非正規」の庶民も快哉をあげる。伏線が複雑に張り巡らされているため、見逃し視聴や有料配信も賑わう。果ては関連グッズに飛びつく人も少なくない。

しかも複雑な設計をやり切った物語は、多様な層にヒットするためにリアルタイム視聴率も高くなる。

台本重視が、プラスのスパイラルを創り出しているのである。

この一点突破・全面展開のような作法で、テレビドラマはどんな地平にたどり着くのか。日曜劇場の奮闘に期待したい。

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