同じ10月26日に第1戦を迎えた日本シリーズとワールドシリーズ。SNS上では「完全に別競技」「比べるのは残酷」と野球のレベルの違いを指摘する声が相次いだが、視聴率でも大きな格差があった。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「MLBとNPBの市場規模は、1990年代はほぼ同じだったが、今や日米差9倍になったのは双方の野球機構の体質が全然違うからだ」という――。

横浜DeNAベイスターズ(以下、DeNA)が26年ぶり3度目の日本一に上り詰めた。レギュラーシーズン3位からセ・リーグを制覇し、格上とされたソフトバンクにも2連敗からの4連勝という下剋上は見事というほかない。

大いに祝福すべきことだが、NPBの日本シリーズ第1戦がMLBのワールドシリーズ(以下WS、ドジャース×ヤンキース)第1戦と同じ10月26日に実施されたことで、両国プロ野球の格差を強烈に印象付ける皮肉な結果となった。

両シリーズの開始は同日の午前と夜、生中継で見比べるとさまざま面が段違いとの指摘が相次いだ。テレビ中継の視聴率やSNSでのBuzzなどにもそれは表れ、日本のプロ野球が大きく後れをとっていることが浮き彫りになってしまったのである。

テレビ中継での差

DeNAと、WSを制した大谷翔平率いるドジャース。両チームのテレビ中継はどう見られたのか。第1戦を比較すると、MLBの地上波中継は、土曜午前。一方、DeNAvsソフトバンクは夕方から夜にかけての中継だった。

【図表】野球放送の層別視聴率比較 ~日本SとワールドS各第1戦~
スイッチメディア「TVAL」データより、筆者作成

この日は休みのため、両試合の視聴環境に大差がなかった。もちろん夜のほうがテレビを見る人は多かったが、それでもWS中継は日本シリーズの1.2倍超の視聴率となった。

では、どの層がMLBをより見たのか。50歳より上と下の世代で大きな違いがあった。

49歳以下では、MTとM1(男性13~34歳)はNPBが上。M2(男性35~49歳)や、FT~F2(女性13~49歳)ではほぼ互角の勝負だった。

ところが、男女とも3~4層(50歳以上)はMLBが上で、65歳以上だと1.8倍の大差だった。かつて巨人戦ナイターをよく見ていた中高年ほど、NPBでなくMLBに魅せられた格好となった。

性別・年齢以外の属性でもNPNよりMLBをより見たという層が多い。

例えば「国際問題に関心あり」層はある程度わかるとして、「企業に勤める役員・管理職」層はNPBの1.35倍となった。野球を楽しむのに加え、日米野球ビジネスのあり方に注目したのかもしれない。

また、「テレビドラマ好き」層でも1.4倍の差となった。8回裏に大谷の2塁打から同点に追いついて延長戦に突入したものの、10回表に1点勝ち越される。しかしその裏、足を怪我しているフリーマンがWS史上初の逆転サヨナラ満塁ホームランを放った。この劇的な展開が、ドラマ好きにはたまらなかったに違いない。

さらに突出していたのは「ファッション好き」層の20~40代独身女性。2.3倍と格差が最大となったが、ゲーム展開の面白さ以外に、球場の華やかな雰囲気や選手のスター性など、日米の違いを敏感に感じ取っていたようだ。

もう一つ特筆すべきは、午前に生中継されたMLBのダイジェスト放送だ。NPBの生中継と同じ時間帯に編成されたが、再放送は日本シリーズ中継の6割以上の数字を稼いだ。再放送が上回った層も目立ち、ライブのNPBより、結果がわかっているMLBを選択した人が多かったのだ。