企業の決算書からは何がわかるのか。公認会計士の川口宏之氏は「企業の経営状況を把握するために重要なポイントは6つ。これを押さえれば、100ページを超える有価証券報告書でも楽に読めるようになる」という――。
※本稿は、川口宏之『有価証券報告書で読み解く 決算書の「超」速読術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
海外投資家が重視する自己資本利益率
各企業の「決算書」を読み解けば、その会社の成長性や健全性をほぼ把握できます。
ひととおり財務データをチェックした後、さらに有価証券報告書を深掘りし、さまざまな側面から会社を深く読み込みたいという人のために、より細かく会社のことを知るためのポイントを6つ紹介しましょう。
〈ポイント1〉ROEの水準とトレンドをチェックする
ROEとは「Return on Equity」の略で、「自己資本利益率」とか「株主資本利益率」などと称されます。つまり、株主が提供している資本を用いて、その会社がどの程度稼いでいるのかを示す数字です。したがって、ROEの数字自体は高いほどいいとされます。
かつて、日本企業はROEが極めて低いという点が海外の投資家から見て大きな不満のひとつでした。
では、実際のところROEはどの程度あればいいのか、ということですが、現在は8%がひとつの目安とされています。
これは2014年8月に、経済産業省が「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築」というプロジェクトの最終報告書で、企業が海外の投資家から投資対象として適格であると認めてもらえる最低水準として、ROE8%が提唱されたことに端を発しています。
以来、日本企業の多くがROE8%達成を目指して、経営改革に取り組んできました。