ちなみに、「SUMCO」という、半導体の原材料となるシリコンウエハーを製造している会社のROEを見ると、過去5年間で最も高かったのが2018年12月期の22.3%。2020年12月期には新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて8.3%まで低下していますが、そこから回復基調をたどり、2022年12月期には13.9%まで向上しています。

では、ROEはどうすれば高まるのでしょうか。それを説明する前に、ROEの計算方法を紹介しておきます。

・ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

ROE引き上げのための自社買いと借入増は一長一短

ROEの数字を上げるためにはいくつかの方法があります。

たとえば自社株買いがそれです。自社の株式を株式市場で買い付け、それを償却すれば自己資本の金額が減少しますから、当期純利益が変わらなかったとしても、ROEを上げることができます。あるいは配当金を増やして自己資本を減らすのもひとつの方法です。

もうひとつの方法は、借入を増やすことです。借入金を増やして事業を拡大させ、利益の増大を目指すのです。利益が増えれば、自己資本が変わらなくてもROEは向上します。

川口宏之『有価証券報告書で読み解く 決算書の「超」速読術』(かんき出版)
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ただ、いずれの方法も一長一短です。

自社株買いや増配によって自己資本を減らせば、経営体力が削がれます。借入を増やして事業を拡大させるのも、それが軌道に乗れば売上が増えて利益の増大につながり、ROEを高めることになりますが、投資を増やした途端、景気が低迷して売上が落ち込んだりしたら、借金の返済に窮して、下手をすれば倒産の危機に直面してしまいます。

ROEを向上させることが目的化してしまうと、こうした小手先の方法を用いて、とりあえず数字だけを引き上げようとする会社も少なからず出てきます。しかし、それではなんの意味もありません。もっと真っ当な方法で、ROEを向上させるべきです。

「売上高当期純利益率」「総資産回転率」の上昇が理想的

そのために注目しておきたいのが、「売上高当期純利益率」と「総資産回転率」です。売上高に対する当期純利益を増やせば、結果的にROEの向上につながります。

また総資産回転率は、会社が持っている総資産、つまり貸借対照表の資産合計額が相当するのですが、この総資産を用いてどれだけ売上高を増やせたかを測るための指標です。計算式は、

・総資産回転率(回)=売上高÷総資産

になります。この回転数を上げるためには売上高を増やすことが重要です。したがって、「売上高当期純利益率」と「総資産回転率」の両方が上昇した結果としてROEが向上すれば、それが理想と言ってもいいでしょう。