今秋、日本マーケティング学会が設立された。当学会では学者だけでなく、実務家も加わり、理論と実践の融合を目指すという。これを手がかりとして、現代におけるマーケティングの意義を筆者は問い直す。

 

日本マーケティング学会。設立記念大会は2012年11月11日(日)に行われる。設立発起人には、学者のほかに実務家も多く、柳井正(ファーストリテイリング会長兼社長)、佐治信忠(サントリーホールディングス会長・社長)らも加わる。

今秋、50人を超える学者・実業家の発起人の呼びかけのもと、日本マーケティング学会が設立された。その発起人のメンバーの中には、アメリカから、フィリップ・コトラー教授とデイビッド・アーカー教授のお二人も名を連ねられている。コトラー教授は、『マーケティング・マネジメント』のベストセラーで日本でもおなじみ。私が学部ゼミで最初に読んだ本が氏の分厚いテキストだった。それ以来、日本で氏はマーケティングの神様のような存在になっている。アーカー教授も劣らず有名で、戦略計画やブランド論の分野では知らない人はないくらいだ。

発起人の皆さんには、「あなたにとってのマーケティングとは何か」と、「影響を受けたマーケティングの一冊」が尋ねられている。それらの回答は順次、日本マーケティング学会(http://www.j-mac.or.jp/)のフェイスブックで紹介されている。それに対する、お二人の教授のお答えは、どんなものだったか。「あなたにとってマーケティングとは何か」の答えについては、紹介する余裕はないので、サイトを見ていただくことにしよう。

興味深いのは、「影響を受けた一冊」のほうだ。というのは、お二人は共に、ピーター・ドラッカー教授の本を選ばれている。アーカー教授は、「マーケティングの文献ではないが、ピーター・ドラッカーの『創造する経営者』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007年」)に研究や執筆面で私は大きな影響を受けた」と言われる。コトラー教授は、『マネジメント』(有賀裕子訳、08年、日経BP社)を挙げ、次のドラッカーの言葉を紹介する。

「ビジネス企業には、2つの、たった2つの基本機能がある。それは、マーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションが結果を生み出すのだ。すべてのそれ以外の機能は、コストでしかない」

正直、私も、アメリカの著名なマーケティング研究者が揃ってドラッカー教授のお名前を挙げられるとは思わなかった。ドラッカー教授は、アメリカにおけるマーケティング研究において深い影響を及ぼしておられるようなのだ。今回は、この話を手掛かりに、あらためて現代におけるマーケティングの意義、そして新たにマーケティング学会が設立されたことの意義について考えてみることにしたい。