業績不振のルネサスエレクトロニクスへ政府系ファンドの産業革新機構と共同でトヨタ、日産、ホンダ、パナソニックなどの日本を代表する製造業が支援を決めた。今回は理想的な企業間協業の形を考える。

協業における3つの基本方式とは

トヨタ、日産、ホンダ、パナソニックなどの大企業が政府系ファンドの産業革新機構と共同で1000億円を出資し、業績不振のルネサスエレクトロニクスを支援することになった。(※雑誌掲載当時)ルネサスエレクトロニクスは、NEC、日立製作所、三菱電機のシステムLSI事業を統合してつくられた会社で、自動車や家電製品を制御するマイコンを生産している。これら3社がルネサスエレクトロニクスの現在の大株主である。国際競争のせいで厳しい経営状態が続いているため、米国のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)から1000億円の出資の提案があり、支援策がつくられつつあったが、海外投資家主導で大胆な事業再編を行った場合には一部製品の安定供給が確保できなくなる可能性があるため、顧客企業からの出資が決められたという。この出資の背後には、アセンブリーメーカーと基幹部品の供給会社との間にいかなる協業関係がつくられるべきかという重要な問題が隠されている。この問題は、ホンハイのシャープへの出資騒動の背後にもあった。グローバルな競争で淘汰が進むと、買い手も売り手も少数になってくる。このような状況では、市場での競争を通じてよりよい取引条件を求めるということはできなくなる。市場での競争に代わって売り手と買い手の協業が必要になる。

企業間の協業は大きく2つの方向のものに分けることができる。1つは縦方向の協業である。生産・販売段階の上流から川下までのサプライチェーンにそった協業である。先に例示したような取引関係を含む協業がこの代表例である。日本の自動車産業における部品サプライヤーと組み立てメーカーとの協業、日本のコンビニエンスストア業界における店舗、本部、卸、さらには食品メーカーとの間の協業もこのタイプに含められる。