最近では目立った企業の不祥事が少なく、コーポレートガバナンスについての議論は沈静している。こんなときこそ、ガバナンスとは何か、出発点に立ち返り冷静に議論すべきと筆者は説く。
法学者と経営学者で見方が異なる理由
しばらく前にオリンパスや大王製紙で不祥事が起こったときには、コーポレートガバナンスについて活発な議論が戦わされた。最近は幸運なことに目立った不祥事が起こっていないので、議論は沈静している。だからといって今の日本企業のコーポレートガバナンスに問題がないと言いきれるのだろうか。
企業はお金を溜め込むばかりで投資をしなくなっているし、しばらく前まで優良だと思われていた企業が瞬く間に経営危機を迎えている。これらは、適切なガバナンスが行われていない証拠といえるかもしれない。不祥事が起こっていないときだからこそ冷静に考えるべきコーポレートガバナンスの問題があると私は思っている。不祥事が起こったときには、悪いことが起こらないようにする制度や慣行に目が向けられるが、悪いことが起こっていないときには、よいことを起こすためにどのような慣行をつくるかが考えられるべきだ。企業経営にとっては、悪いことを起こさないようにすることも重要だが、それとともにあるいはそれ以上に重要なのは、よいことを起こさせる制度や慣行である。
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