地域ブランドの構築に力を入れる地域は多い。企業のブランド構築はそのお手本とみなされることがある。筆者は地域と企業のブランド構築は違うとして、地域ブランドを着実に展開する方法を考える。
地域ブランドの構築を願う地域は多い。そのお手本に企業のブランド構築実践がある。それをお手本にした地域ブランド本も、すでに何冊もある。だが、企業ブランドの構築と地域ブランドの構築を同列に置いて議論できるのだろうか。少し前だが、ある県が、県ブランドをスタートされるというおめでたいシンポジウムに呼ばれ、パネラーとして意見を述べているうちにそのあたりが気になってきた。今回は地域ブランドをテーマに取り上げよう。
企業ブランドの守るべき要諦とは
ブランドというと、ヨーロッパの高級ブランドしか思い浮かばなかった時代はそれほど遠い昔ではない。1990年代にブランドを市場戦略の主軸に置いた経営を試みるのは、P&Gやコカ・コーラやネスレなど外資系メーカーが目立っていた。しかし、いまやわが国の消費財産業でブランドを主軸に置かないメーカーはない。
そうした風潮の中で、各社のブランド構築の手法も定着したものとなってきた。第一に、当該ブランドについて、生活者の認知度を上げ、理解度を上げ、好意的な態度を確保し、購買意欲を上げることに注力する。そして、マーケットにおける確固とした地位(ポジション)を確保する。ブランド概念が導入されることで、マーケティングの焦点がビシッと決まってきた。
第二に、継続的な売れ行きを確保するために、「ブランド・エクイティ」の構築を目指す。人気が増しその商品の売れ行きが増えても、それで事終われりとするのではなく、継続的な成果を得ることができるよう「市場資産」に変える。生活者の記憶に長くそして深く残り、豊かな連想を担保できるようにすることだ。そうなれば、その後、マーケティング上、いろんな便益を享受できる。
関連した系列商品を市場導入するのに手間もコストもかからない。あるいは、ライバルが追随して参入してきても、「本家本元はこっち」と生活者が自然に味方につく。コカ・コーラが世界各国に進出するうえで、「アメリカの豊かな生活の香り」という連想を生活者に与えるということが果たした役割は、決して小さくはない。