ブランド構築は、こうして企業における重要経営課題として位置づけられ、巨額投資が試みられてきた。

企業のこうしたブランドづくりにおいては、守るべきいくつかの要諦がある。

第一に、ブランドのアイデンティティ、ないしは市場でのポジショニングを大事にすること。「スカッとさわやか」コカ・コーラ、「ファブする」ファブリーズ、「スプーン一杯で驚きの白さに」のアタックといった形での市場ポジショニングの確保だ。これが鮮明でないと、市場での橋頭堡さえ築けない。

第二は、統合性重視、つまりブランドにおける曖昧さや多様さの回避だ。ブランドは、それを用いる生活者とさまざまな所で接点をもつ。これらは、ブランドと生活者との間のコンタクト・ポイントと呼ばれる。テレビCM、販売店頭、あるいは製品パッケージもそうだ。それ以外でも、駅や電車内のポスター、街を走る営業車などなど、各所でブランドの名前や姿を見る。

いずれもコンタクト・ポイントだ。それらのトーンがバラバラだと、あるポイントでせっかく生まれているいいブランド経験が、別のポイントで台無しになってしまうということが起こる。素晴らしい広告で受けた感動も、乱暴運転の営業車を見て、一気に醒めてしまうことだって考えられる。そうした事態を避けるべく、多様なコンタクト・ポイントをできる限り統一されたトーンで構成する必要がある。

第三に、ブランド・マネジメントの成果は、そのブランドが生み出す収益・利益で測られるが、もう1つ「ブランド自体のエクイティ」を育てることが重要だ。たとえば値下げをして市場シェアを一気に上げるというのは、マーケティングの手法としてはありだろうが、それでブランド・エクイティが毀損される可能性がある。思慮のない値下げは、生活者のそのブランドへの信頼感を落としてしまう。