東京証券取引所は独立役員の選任を義務化するルールを定めた。なぜこのようなルールがつくられたのか。今回はその目的の正当性を考えたうえで、制度が有効な手段であるかどうか、考える。
なぜ一般株主の利益を考えることが重要か
昨年12月の初めに『独立役員の実務』という書物が送られてきた。編著者と送り主はともに東京証券取引所。私は上場会社の「独立役員」として東京証券取引所に登録されているから送られてきたのだろう。本書では独立役員制度の目的が明示され、この制度をうまく機能させるための独立役員の行動規範が示されている。
東京証券取引所は、数年前に、上場会社の社外取締役、あるいは社外監査役のうち、会社やその取引先、あるいは大株主と直接的な利害関係を持たない役員のなかから少なくとも1人を独立役員として届け出なければならないというルールをつくった。なぜこのようなルールが必要なのかという疑問を抱く企業関係者が少なくなかった。本書の狙いの1つは、このような疑問に答えることにある。もう1つの狙いは、独立役員はどのように行動しなければならないのかについての規範を示すことにある。
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