コンビニエンス・ストアは地域集中出店に見られるように、市場面での規模や範囲の経済性を追求する。その一方で、小売業では新たなリテールマネジメントの時代を迎えている。

複数店舗を経営する小売り本部において、商品の仕入れを集中し、仕入れにおける規模の経済を個々の店舗の他店との競争において徹底的に生かそうとして始まったのが小売りのチェーンストア経営(佐藤肇・著『日本の流通機構』)。そのイノベーションは、期を画するものであったが、それはリテールマネジメント1.0(RM1.0)の時代として特徴づけできる。アメリカにおいてチェーン経営が誕生して以来の100年はそれだったし、わが国では高度成長期にダイエーや西友が勢力を伸ばした時代もそうである。

その中で、生活者の生活が豊かになり多様性が求められる時代に入るとともに、その限界が認識されるようになる。そこで生まれてきたのが、「地域に根差した(localized)チェーン経営だ。その時代は、リテールマネジメント2.0(RM2.0)の時代と見なせよう。RM2.0は、チェーンのメリットを、供給側にではなく、主として市場側に求めようとする動きとして特徴づけできる。市場で共食いを恐れることなく、「鎖のように連鎖した店の連なり」にメリットを求める。そのやり方は、地域集中出店として特徴づけできる。そのやり方を通じて、(1)比較的同質の生活者ニーズへの標準的対応、(2)限定された地域での集中的物流、(3)チラシ等地域集中の宣伝、(4)密度の高い情報や人的交流といった、主に市場面で、規模の経済性や範囲の経済性が得られる。

こうした経済性を積極的に追求したのは、コンビニエンス・ストアのセブン-イレブンであるが、スーパーマーケット経営においても生かされた。関西スーパーを創業された北野祐次さんやサミットを再生させた荒井伸也さんはそれを追求した。両者は、スーパーマーケットという店を、あらためて「日々生活する人のためのお店」、もっと言うと、「夕食の食材を賄うためのお店」と定義した。その定義に合わせた形で、スーパーマーケットという事業のありようを徹底的に追求した(安土敏・著『スーパーマーケットほど素敵な商売はない』)。それまで、「安かろう、悪かろう」と言われて、もう一つ日々の生活の中に定着できなかったスーパーだったが、そのイメージを大きく変えたのはこうした企業家たちである。故伊丹十三監督の名作「スーパーの女」のモデルになったのは、この種のお店である。