どのような商品を店に並べるのかは、店にとってもっとも大事な決定である。それについて決定するうえで重要な役割を果たすのは、小売りの本部にいる商品本部長でもなく、はたまた店の店長でもない。店の店頭現場で働く人たちが大きい役割を果たしている。その方々にそうした活躍をしてもらうことが経営者の第一の課題になってくる。経営者は、そこに一番心を配る。

ダイエーの副社長をされ、その後スーパーマーケット企業の社長をされた川一男氏がおっしゃる自身のエピソードも印象に残る。川氏は、あるスーパーマーケットに経営者として乗り込んだ。あるとき、店で働く主婦たちが、自分たちで店に並べている商品を買っていないことに気が付いた。彼女たち自身の夕食のための買い物は、他の店で済ましていたのだ。彼女たちはおそらく、スーパーマーケットでの仕事は仕事と割り切って、自分たちの夕食の用意は夕食の用意として別の気に入った店で買っていたのだ。川氏は驚いた。そして、彼女たちに頭を下げて謝ったという。「申し訳ない。皆さんが買わないような商品を店に並べて……。あらためて、皆さんに買ってもらえるような商品を並べるので、協力してほしい」と、……(「川一男インタビュー録」(流通科学大学附属流通科学研究所、12年)。

経営者の目線はどこにあるか

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経営の目線が下がる

RM1.0の時代は、小売り経営者の目線は供給部門にあった。どれだけの量を仕入れることができるか。どれだけ有利な条件で仕入れることができるかにあった。RM2.0になって、目線は供給者から市場や店に向く。店を鎖が連なるように連ねて集中的に出店することで当該地域への適応力を上げるとともに、鮮度の高い夕食用食材を提供することを社のミッションにした。RM3.0では、さらに目線が落ちて、店の最前線で働く人たちが店の魅力を上げていく。小売り経営を左右するカギは、現場で働く1人ひとりの人たちが創意工夫に向けた意欲をもっているかどうかにある。

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