半径500メートルの店を視察して回った
小売業にとって厳しい状況が続くなか、18期連続で増収増益を達成しているスーパーがある。九州北部に41店舗を展開する食品スーパー「ハローデイ」がそれだ。2010年3月期の売り上げは584億円。従業員は4300人(パート含む)の中堅企業である(※雑誌掲載当時)。
店頭へ行くと、目につくのは店内と商品のディスプレーに工夫が凝らしてあること。福岡の姪浜店では天井にクジラが泳ぎ、コスタ行橋店では陳列棚の上に巨大なキノコ、くまやリスのぬいぐるみが飾られている。
商品ディスプレーも一般のスーパーとは違う。果物、野菜はみずみずしさをアピールするために、半分にカットしたものが置いてある。
ハローデイの商品は、大手GMSや地元のスーパーと比べて決して安いわけではない。たとえば小倉にある足原店には、東京・銀座の百貨店にもテナントを出すオリーブオイルやビネガーの量り売りのコーナーがあり、100ミリリットルあたり800円程度だ。しかし、売り場にいると楽しい気分になり、ついつい買い物をしたくなる。
家業を継ぎ、08年から社長となった加治敬通氏は次のように語る。
「規模を大きくするつもりはありません。私たちは、日本でいちばん働きたくなるスーパーをめざしています」
今でこそ業界から注目され、「日本一視察の多いスーパー」になったハローデイだが、加治が父親から店長に抜擢された約20年前は、「地域でいちばん遅れていたスーパー」だった。特に生鮮食品の売れ行きが悪く、加治は窮余の一策として半径500メートル以内にある他店をつぶさに見て歩いた。わかったことは自社の商品ディスプレーが拙劣だったこと。