※本稿は、三嶋(原)浩子『“引退しない人生”をデザインする 無定年の設計図』(高橋書店)の一部を再編集したものです。
同窓会欠席は多大なる「機会損失」
50代の同窓会では、欠席者の噂話で盛り上がります。「森くんがいないね」から始まった彼の消息は華々しい話でした。
森くん(仮名・57歳男性)は、大手IT企業でシステムエンジニアとして活躍、早期退職後はベンチャー企業の役員として、地方創生に不可欠なITインフラの整備に取り組んでいるそうです。「あいつ故郷愛が熱いから、地方創生に興味を持ったみたい」、消息を知るクラスメイトの解説です。ネクストキャリアでも大忙しのため「同窓会は欠席」と連絡が来たそうです。
長年培ったITスキルで、社会に直接的な貢献をしたい、という思いは立派です。定年に縛られず、大企業勤務の立場に甘んじることもなく、自らの意志と情熱で新たな道を切り開いた。無定年のお手本です。しかし森くんは「同窓会の欠席だけは失敗」と考えられるのです。
「キャリア自律」の意味を考える
森くんの失敗を解説する前に、「キャリア自律」の意味をまとめます。今の50代は「人生100年時代のキャリアを自ら考えよう」と、突然「キャリア自律」を迫られています。キャリア自律を「自立」とする、間違った漢字変換が散見されますが、両者は本質的に異なります。
キャリア文脈で言えば「自立」は、企業や組織に依存せず、生計を立てられる状態。フリーランスが分かりやすい例です。対して「自律」は、キャリアの方向性や選択を自身の信念に基づいて決定し、行動していく能力とプロセスのこと。時にはキャリアの方向性を大胆に転換する勇気をも含みます。
同窓会を欠席した森くんは、まさにこの「キャリア自律」を実践しました。「キャリア自律」のプロセスを具体的にまとめると、次のようになります。
①自己理解の深掘り:自身の強み・弱み・興味・価値観・情熱、働くうえの最優先事項を明文化すること。これはキャリア形成の羅針盤かつ基盤。
②環境認識と変化への対応:社会、経済、産業の変化、テクノロジーの進化が自身のキャリアにどんな影響を与えるかを認識し、学習やスキルの更新を怠らない。
③目標設定と計画:自己理解と環境認識に紐づく、具体的なキャリア目標を設定。達成に向けた計画を立てる。計画は固定せず、状況に応じて柔軟に修正。
④行動と学習の継続:目標達成のために積極的に行動し、その結果を振り返り、新たな学びを得て、次の行動へとつなげていくサイクルを回し続けること。
⑤主体的な意思決定:企業や組織の方針にひたすら従うのではなく、自身のキャリアにとって何が最善かを常に問い、自らの意思で決断を下す。

